西米良村
八重集落元気づくり新聞

平成21年2月18日
第1号
発行:国土交通省九州地方整備局

平成21年2月10日(火)
八重活性化センターで、第1回「集落元気づくりワークショップ」を開催しました。

   

国土交通省九州地方整備局では、「自立した元気な九州圏土づくり」を目指し、小規模・高齢化集落の活力維持・向上に向けた取り組みと支援策の調査・検討を行っています。

「集落元気づくりワークショップ」では、集落の人々のくらし・生活をいかに維持していくかに焦点を当てながら、元気を呼び戻すために、集落の人たちの力で、一緒に考え、話し合いながら「集落元気づくりの取り組み」を見いだしていくことを目的とします。

第1回のワークショップでは、世代別に4班に分かれ、集落人口ピラミッドや集落現況マップを作成しながら、集落の現状について話し合いました。

真剣な議論の中にも、笑いが包む和気あいあいとした雰囲気で、熱気にあふれたワークショップとなりました。

今後、集落の10年後、未来を考え、元気を出していく取り組みについて話し合っていきます。

 

   


○集落の位置
宮崎県児湯郡西米良村の西部、熊本県境に位置する集落

○集落の特徴
平成元年に有志一同による物販所を開設し、ファミリーフィッシング等のイベントをやっていたが、平成16年の災害以降行われていない。当時のメンバーは現在70歳代。50歳代〜60歳代が少なく、新たに集落づくりを行う次世代への引き継ぎが課題。若手としては消防団員を構成する8名である。集落内にある村営の定住促進住宅にはIターン者を含む2世帯が居住。 

   

集落中心部にある集会所。平成16年の台風時に水に浸かる。以来住民は大雨が来ると自主的に集落外へ避難する人が多い。 

  集落中心部より上流にある「吐合地区」では、近年、高齢単独世帯が増えている。



 
〜後継者世代が他出、70代居住者が最も多い〜

集落の人口構成、集落外に住まわれている集落血縁者
(他出者)の状況を把握するために、人口ピラミッドをワークショップ参加者の皆さんで作成し、その結果判明した内容を下に整理しました。





[人口ピラミッドからみた八重集落の人口構成]
  • 八重集落人口は73名ですが、他出者を含めると186名になります。
  • 現在八重集落の高齢化率(集落全体に占める65歳以上の割合)は53%ですが、他出者を含めると21%になります。
  • 60歳代は居住者と他出者共に少ないが、70歳代は多く居住しています。
  • 40歳代〜50歳代の居住者が、昔、進学や就職で他出し、その結果、その子世代にあたる10歳代から20歳代が集落には少ない状況です。



八重集落の人口構成(上段:居住者、下段:他出者)

男性

女性

合計

構成比率(%)

65歳以上

16(0)

23(0)

39《39》

53《21》

15〜64歳

15(41)

11(46)

26《113》

36《61》

15歳未満

2(11)

6(15)

8《34》

11《18》

33(52)

40(61)

73《186》

※( )は他出した家族、《 》は他出者も含めた数



 

集落現況マップ(グループ@)
:不安、:資源)

[皆さんが多く感じた八重集落の不安]

  • 鹿、猿等による鳥獣被害
  • 山瀬谷を始めとする山崩れ、土石流、落石、増水
  • 小児科が遠い、高校が遠いため学費がかかる

[皆さんが誇る八重集落の資源]

  • 山菜、蜂蜜、寒蘭、ヤマメ、鮎、鰻
  • 山桜、紅葉、藤の花、オオムラサキ、メジロ
  • 御大師堂、吐合地蔵、西郷隆盛伝説
  • 豆漬け谷の湧水、星空、棚田、滝
  • 鹿刺し、味噌団子


 

 
昔やっていたお祭りなど、資源抽出で話題ははずむ

 
他グループの発表を熱心に聞く参加者




 ワークショップに参加された皆さんの感想と、今後集落元気づくりとして取り組んでみたいことを紹介いたします。


代表的な感想 今後集落元気づくりとして取り組んでみたいこと
  • 地元に有るもの、歴史等、少しながら発見もありました。まだまだ、元気な地区になりそうだと思いました。
  • グループで色々な話を出す中で、今の八重地区の現状が改めて見え、新たな発見・再確認する事が多かったです。年代別に分かれて話し合う場はなかなか取れないので、話し合ってみて、皆さん色々な事を思っていることが分かり、楽しかったです。年代が上の人に、郷土料理を教えてもらいたいなと思いました。
  • 水害にあってから、地区活動が億劫になっていたので、今日の時間は水害に遭う前の地区活動の楽しかった頃を思い出しました。
  • 人口ピラミッドにより集落の事が分かった。地図を使った事で、場所も分かりやすかった。
  • 八重地区についての勉強会
    …歴史的な事を始め、誰の山かなど、地域管理の情報の共有のためにも。
  • 山桜の花見、紅葉狩り
    …国道沿いにベンチや公園を設置して、桜や紅葉等を車窓から眺めるのではなく、足を止めてもっと近くで見られるように出来れば良いかなと思います。ファミリーフィッシングを桜の時期に復活させて、活性化させたい。
  • 空き田畑を利用した生産
    …老人の収入源として。獣害のない作物の生産をしてみたい。



吉武哲信先生は宮崎大学で、地域・都市計画,コミュニティ計画,交通計画の分野を研究されており、農山村コミュニティについても多くの研究実績をお持ちです。今回のワークショップにも企画段階から実施まで参加していただきました。ワークショップ終了後、吉武先生より次のような講評をいただきました。

「ワークショップは、参加者が楽しく行えたかどうかが第一である。今回、ほとんどの方にワークショップに参加して良かった、楽しかった、と感じてもらい、開催した意義があった。

話し合いや発表を通して、八重集落の魅力をあらためて知る良い機会になったのではないか。特に、若い世代の方は、自分たちの住む地域でありながら初めて知ることも多かったようで、これを機会に年配の方からいろいろと習われたらどうか。」

次回も皆様の活発な議論を楽しみにしております。


【次回開催のご案内】

日時 : 平成21227日(金)午後1830分〜午後2130

場所 : 八重活性化センター

「テーマ:第2回自分たちの10年後を考えてみよう」

      〜10年後の集落の姿を考え、集落の問題・課題の抽出と取組について〜







図1 集落の共同活動の重要性について




図2 集落への居住継続意志




図3 居住を継続する上での不安




図4 集落元気づくりへの取組意向









































(1)アンケートの配布・回収について

  • アンケートは八重集落の全世帯の世帯主の方へ送付、各世帯から直接回収を行いました。
  • 配布数32に対し、回収数26世帯、回収率81.3%です。

(2)集落の共同活動の重要性(図1)

  • 重要であると思われているのは、「共有資産の管理、集落内での葬儀の実施、寄り合い、他出家族との絆の強化、行政と一緒に取り組む地域づくり活動、住民の足の便の確保」です。

(3)集落への居住継続意志(図2)

  • 今後の集落への居住意向については、「今後とも住み続けたい」(17世帯)が最も多く。次いで「状況によっては離れざるをえない」(6世帯)となっています。

(4)居住を継続する上での不安(図3)

  • 居住を継続する上での不安の上位3項目として、「土砂崩れ、崖崩れ等の発生の危険性が強い場所がある」(18世帯)、鳥獣被害等が増加している」(13世帯)と 回答した世帯が多くなっています。

(5)今後居住を継続する上で必要なもの

  • 最も重要な項目として、「集落内の相互扶助」(11世帯)、「国や自治体の支援・協力」(8世帯)が最も多くなっています。

(6)集落内あるいは近隣の地域資源

  • 集落内あるいは近隣の地域資源としては、「御大師堂、豆漬け谷の湧水、板谷川、下相谷の山桜、光男桜、竹之元谷」が挙げられました。

(7)集落内の活用可能な資源

  • 集落内あるいは近隣の活用可能な地域資源としては、「遊休地や耕作放棄地や空き家」が挙げられました。

(8)集落内あるいは近隣の食材を用いた自慢の料理

  • 集落内あるいは近隣の食材を用いた自慢の料理としては、「山菜(サトガラ、ウド、ワラビ、イタドリ、筍、ワサビ、タラの芽)、魚」が挙げられました。

(9)子孫に残したい伝統芸能、特技・手業

  • 残したい伝統芸能、特技、手業としては、「伐採技術、炭焼き、米良寒蘭の培養、木工、釣り、狩猟」が挙げられました。

(10)集落元気づくりへの取組意向(図4)

  • 集落元気づくりへの取組意向としては、「取り組みに向けて集落内の話し合いをしたい」(8世帯)、次いで「今のところ取り組む気はない」(7世帯)、「周辺集落と協力して取り組みたい」(5世帯)の順でした。


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