西米良村
八重集落元気づくり新聞

平成21年3月3日
第2号
発行:国土交通省九州地方整備局

平成21 年2 月27 日(金)に八重活性化センターで、第2回集落元気づくりワークショップを開催しました。

   

小雨が降る中、八重活性化センターには、約30 名の方が集まり、今回も熱心な議論がされました。

 第1回ワークショップに続き、今回は集落元気づくりの取り組みとして考えられるプロジェクト企画を、テーマ別に4 グループに分かれて話し合い、集落として取り組むべき「集落元気づくり」の骨格を作り上げました。

 集落の現況を見つめ直し、将来を予測する中で、新たに見える集落の問題と課題。その共通認識の中から、世代間の意識差を解消し、お互いのやりたいことの話し合いはみんなが真剣勝負でした。

 
あいにくの雨、でも会場には約30 名の参加者が


 
第1回ワークショップで出された「資源」、の活用や「不安」の解消に向けた8つのテーマを選び出しました(下図)。その後参加者の希望より4 テーマに分かれて話し合いました。



   鳥獣被害が昔から多い八重では、鳥獣被害を受けない作物を作って生計を立てていた先人の知恵を参考に、八重の特産物を作ることが考えられました。

 使うものは、コンセプトの「MADE IN そこらへん」にも表れているように、八重に自生している数々の植物。その一つが「ミツマタ」。ミツマタは紙の原料にもなるうえ、早春にはきれいな黄色の花を咲かせ、八重での紙の生産を復活させるとともに、八重に新たな季節の彩を加えることにもなるでしょう。このほか、茶の実からとれる油を採取して商品化、カヅラを使ったクリスマスリース作り、草木染めなどが考案されました。

 このように、「特別な工夫をすることなく、鳥獣被害の有無に左右されない植物を使うなど、自分たちの力でできることからやること」が八重の特産品づくりプロジェクトの方向性となりました。



《ミツマタ(三椏)》
ジンチョウゲ科の落葉低木。樹皮の繊維を紙の原料とするために栽培される。中国原産で、日本に伝来した年代は不明であるが、17世紀以前のこととみられる。樹高1〜2メートルで、枝がすべて3本に分かれるのが特徴で、ミツマタの名はこれに由来する。 



 

 平成16 年の台風災害から集落の寄り合いが減り、それまで行っていたファミリーフィッシング大会など、集落のみんなで楽しむことがなくなりました。

 今、集落では警察官だった光男さんが10年前に植えた「光男桜」が立派に育っています。

 参加者からは「集落の周辺に自生しているミツマタを栽培して、光男桜に彩りを与えたい」、「花見でバーベキューが出来たら」、「夜桜を楽しむためにライトアップをしたら夜も楽しめそう」などのアイデアが次々と出てきました。

 さらに、「まずは自分たちが楽しむのが一番」、「外の人と一緒に楽しみむのはその後でいいや」、「いつも炊きだしばかりしている婦人部も楽しめるように、外から屋台に来てもらえるともっと盛り上がるよね」などなど、欲張りなプランに発展。

 ファミリーフィッシングの頃のようにみんなが、前日からのわくわくした雰囲気も楽しみ、イベントを盛り上げて、集落のにぎわいが続いてほしいと思っています。

 


今年も「光男さくら」が咲くのが楽しみ

「ミツマタ」の花は2月から3月にかけて見頃

   平成16 年9 月、台風18号が八重を襲い、土砂崩れ、避難所の床上浸水、避難道路の寸断など、甚大な被害をもたらしました。八重の集会所には20 名が避難。しかし何人かの住民は避難せず自分の家にとどまっていました。

 参加者からは「避難がバラバラだと連絡がとれないので不安」、「避難生活がどれくらい続くのか、最後は食料が尽きた」、「10年後の消防団は4 人」、「住民全員の避難場所リストって更新されていたっけ?」など、避難生活の苦労話や災害時の問題点が次々と出されました。

 あのような怖い思いは二度としたくない。そんな思いから「消防団の定年を10 年延期」、「避難用食料備蓄をしよう」、「備蓄食糧が古くならないよう、定期的に食べるイベントを開催しよう」等と具体的な解決策が飛び出し、最後は避難を拒んでいた方も「俺も今度からみんなと避難する!!」と宣言。本日の最も大きな成果へと結びつきました。

 最後に参加者から「消防団の定年は79 歳でいいよ。俺、80歳だから」との迷言も飛び出し、一同大いに盛り上がりました。

避難所が浸水、裏手から急な小径を徒歩で避難

新しい避難所は快適だが、食料備蓄が課題


 

 八重では猪、鹿、猿による鳥獣被害が多く、主に畑や造林地で起こっています。当初は、農作物が最も被害を受けていると予想していたのですが、それに反し参加者からは「農作物の被害は自分の家で消費する分だけ。最も深刻な被害は林業だ!」との意見が出されました。

 一般的に、鳥獣被害対策は「防護柵設置」「作物変更」「捕獲」の3種類ですが、広大な山林を守るためには、防護柵や作物変更では対応できません。


鳥獣撲滅プロジェクトは刻々と具体化されていく

鳥獣被害について熱く語る尾前さん
 その後「狩ること!」を中心として議論が白熱。「猟友会に猟をしてもらう」、「猟友会の捕獲率は低い」、「鹿1頭の奨励金は五千円だ」等々の話題が飛び交いました。また、自分たちでできるなら自分たちでやりたい!との思いから「我家で猟師を育てよう!」そして、鳥獣を撲滅して昔の森を取り戻そうというプロジェクトの方向性が固まりました。

 

 ワークショップに参加された皆さんの感想と、私がやってもよい取組として挙げられた意見を紹介いたします。
 

 代表的な感想
  • これなら出来るかなという事で、皆で取り組めそうだと思った。
     
  • お年寄りのやる気に驚かされた。負けていられない!と思いました。
     
  • 1 回2 回と参加している内に、自分がこれならやれそうな事とか、こんな物を作ってみたいとか意欲が出て来ました。
     
  • 1 人で考えるより、皆で意見を出し合うと、色々とつながって幅が広がるんだと思いました。普段会う地区の方達の新たな一面に気付かされる事があります。
     
  • 各グループがそれぞれのテーマに沿って意見を出し合い、それを発表で聞く事によって、自分のグループ以外のプランが良く分かりました。
     



消防団の牧さん「みんな進んでニコニコ避難プロジェクト」説明中

 この取組なら私がやります!!!

 《八重桜祭り》

  • まずは、あらゆるものを使って、地元で楽しむ事から始められるという事もあり、子育てで忙しい日々の今でも出来そうな気がしました。
 《災害に負けない八重地区》
  • これからも八重で生活する上で、災害に負けない心が必要です。災害にいつあってもいいように、防災についてなど、家内でも話し合いをしたいと思います。
 《ミツマタ キヨシの花だらけ村づくり》
  • ミツマタ栽培を本気で考えています。観光産業として。村民全体で考えて努力すれば、4〜5 年で完成する。
 《昔の森を取り戻そう》
  • どうしても被害を減らしたい。狩猟免許を取るぞ。
     



   山田誠先生は鹿児島大学で、地域総合政策の分野を研究されており、奄美大島でサテライト教室を開講するなど、地域振興プロジェクトを各地で指導されております。先生のワークショップ後の講評です。

 「本日は非常に幅広い年代の方が集まり、楽しそうに議論をしているのが印象的でした。皆さんの一番良いところは「自分たちが楽しく」、そして「やりたいことがある」ということが第三者にも伝わってくることだと思います。

 また、今回は別々のテーマについて議論しましたが、それぞれのテーマが関係していることが、話し合いを通じて感じられたかと思います。お互いが力を合わせると参加者が多くなります。一つのイベントで、2つ3つの目的を達成することが、少ない人数で高齢化が進む、あるいは子供を抱えていて忙しい状況では、非常に重要です。」

 次回はいよいよ最終回です。八重でしかできない取組を皆さんと議論が出来ることを楽しみにしております。

ワークショップ終了後に講評される山田先生


【次回開催のご案内】

日時 : 平成21日(月)午後1830分〜午後2130

場所 : 八重活性化センター

第3回ワークショップテーマ:「集落の未来について語ろう」

      〜集落の問題・課題を解決するための集落元気づくりの具体化〜



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