道守ニュース

「道守活動にみる新たな公」セミナーの概要

2009年3月26日

講話2: 『最近のNPOについて』
NPOサポートセンター理事長 山岸 秀雄 氏

山岸 秀雄 氏

 私は昼間は、銀座でNPOサポートセンターの理事長として、全国の市民や行政の応対をし、夜は大学でNPOを教えています。私の場合、必ず自分の地域で実践していくというのを昔から常にしておりますのでNPOなのです。みなさんが「NPOっておもしろいなあ」、「NPOをつくってみたい」、「ボランテイアで参加してみたい。」と思いましたら、仕事上で触れることもあるかもしれません。また、一市民としてNPOに携わったり歳とって退職されたり、現役の時でも理事になって経営を携わる、あるいは行政マンとして得た知識を掲げていく、環境を守るための方策を教えアドバイザーになっていく。いろんな選択肢がありますが、定年になってもそれから先ずっとあるわけですから、生涯現役でいくことができます。

 学校のボランテイアについてですが、アメリカでは成人で1週間に3時間はボランテイア活動をやるのが平均だったと思います。そしてボランテイア活動の85%から90%はNPOの下で行われているのです。「NPOの下でやるのがボランテイア」と言い切っても良いと思います。ボランテイア文化を創って、公共の点で携わるというのは、NPOを創ってるといく事だと思っております。

 NPO法案ができたきっかけは阪神淡路大震災です。その前からも我々はNPO運動をしており、ボランテイア活動が活発になってきました。しかし、名前もなくては活動できない。多くのボランテイアを動かし切れない。それは、NPOが無いから動かせなかったのです。今はNPOが出来てきましたので、その骨格を理解しながらボランテイア活動も何とか活性化していければと思います。

 「協働」という文字と「公共」この2文字についてはなかなか難しい話になる訳ですが、今は大不況になり、NPOに対する期待が深まってきました。行政の財源も少なくなっており、行政の政策を実行するためにもNPO無し、あるいは市民参加無しに政策の実行は不可能な事態にまでなっています。企業も消費者である市民の理解を得ないことには、経済活動も出来ず、効率化や社会的責任を果たしていくことができなくなっています。そういう中で、市民社会に向けて何とか自分の力を結集していこうということで、NPOという組織体を作って、そこに法人格を持たせて社会的提言力を与える。そういうことで、11年前にNPOについて法律が出来たわけですが、今ではいろいろな問題も起こりつつあります。悪事を行うNPOも出てきておりますし、 なかなか行政からの資金が回ってこないので、運営に困っているNPOもおります。イギリスでは、ざっと3000億円から5000億円はNPOに出していますが、日本では10億から20億くらいでしょうか。アメリカでも政府がNPOに相当出しています。アメリカのNPOは3本立で資金をまかなっています。一つ目は、「政府からの金」、二つ目は「事業で稼いだ金」、三つ目が「寄付金」です。アメリカ人は日本人の50倍~60倍寄付していると言われており、企業も財団もたくさん寄付しています。財団や会社が多いから寄付が集まるのは当然と思われがちですが、実は85%が個人からの寄付なのです。やはり、個人の意識の問題が社会の存続と結びついているのでしょう。

 NPOに対する期待が高まってきたことは一般的に言えると思います。NPOの役割は、地域や社会の問題を解決する。いろいろな問題を解決するのがNPOの役割。そして社会の仕組みを変えていく。社会システムの変革をするのも、我々の大きな目標です。いくつかのキーワードがあるのですが、あらゆるNPOは教育力を持つというのを我々が大事にしています。恐らく戦後で一番失敗したのは教育だろうと思います。しかし、教育だけは他になすりつけても終わるわけではないので、みんなで何とかしていかなくてはならない。私も教育と人材育成に一番力を注いでいるところであります。何故、NPOが教育力を持つかと言うと、NPOは自分たちがやろうとするミッション、つまり社会的使命を看板で掲げています。例えばホームレスを支援しようという時に、多くの人が「汚い」とか「怠け者」とか思っているかもしれない。しかし、それを人権とか理論だけで言うでなくてNPOはミッションを掲げて実際にやってみます。そして人々の心を動かした時に、初めてNPOが必要とするボランテイアとか資金がくることになります。アメリカのNPOでいつも感心するのは、「どういうNPOですか」という事大体のNPOが、1行の言葉で直ぐに答えます。例えば障害者に職業訓練しているNPOに行くと、「どういう事をしていますか?」と聞いたら、「我々は障害者を職業訓練して、税金を払わせる人間を育成している。」と、これだけです。人を動かす力があって初めてNPO法人が運営できる訳ですから、NPOは実践で教育をやる。文部科学省の中心とした教育力とNPOがやる地域との教育が合体して教育していくというのが私の考え方でして、「生涯学習プラットホーム」という柱が文部科学省からでておりますが、それは私の理論そのものです。

 もうひとつ、私がNPOを始めた時から大事にしたいと思っているのは、「新しい働き方」ということです。アメリカやヨーロッパ、NPOやNGOがある所では、第3の働き方の場所としてNPOがあるわけです。アメリカでは全労働者の約8%はNPOで雇用されています。全世界の約5%はNPOで働いています。ですから社会的な勢力としてもNPOは第3の力、第3セクターを形成する所で、雇用の場所としても第3の働き場所なのです。まず、第1セクターの行政、第2セクターが企業、第3セクターがNPOです。海外ではNPOが全体の5%から10%近くを占めています。日本だけが無いのです。これだけ社会が遅れている、市民が社会参加する姿が無いということになります。今はそれを打破して発展させていく。セクターとして縄張りとして発展していく姿があれば、単純に言うと直ちに失業者がいなくなります。NPOはたまたま出てきたのではなく歴史を創るために出てきたと言うことを思って頂ければと思います。

 NPOは、現在3万7千の法人格を持つ団体が出てきました。財団や社団が2万5千くらいと段々減ってきました。ですから、NPO法人の方が公益団体としては大きくなってきました。NPOはボランティア団体という印象がありますが、ボランティア団体ではありません。基本的には有料でやるということが、NPOの姿です。また、社会保険への加入やハローワークの求人登録をしているNPOも半数近くあり、善意だけで動いている団体というものから発展してきたという風にご理解いただければと思います。

 NPOというのはいったい何かというと、社会的資源を活用して、公共的サービスを提供する民間事業体であると思います。民間事業体というのが大事なのです。ビジネスをする市民運動という風に言ってもいいかもしれません。NPOは市民の社会参加の道具です。みなさんのNPOに対する印象は反対運動する市民運動と見る時もあるでしょうし、市民活動と言いつつ不適切な活動をしている人もいる。IT関係や民間企業より儲けているのではないかと思われるような市民事業というのもあろうかと思いますが、市民事業からビジネスまで幅広い。その姿がNPOだとご理解頂きたいと思います。

 先程申し上げたように37,000団体、全国で毎月あたり300団体が誕生しております。11年前にNPO法が成立しました。日本は中央集権国家ですから、もの凄くそこが集中しているわけですよね。つまり国家が一番偉くて、そこが全て公共とか公と決定して市民や国民は遠ざけられていた体系をずっと長く続けてきて、なかなか公共の物事に市民が判断したりすることはできませんでした。NPO法を作ることによって、市民が公共の場に出てくる。社会参加することによって、「私たちは明治維新以来の緩やかな革命をやるのだ。」というのが、NPO法を作った時の決意です。

 また、NPOが作る新しい社会連携、協働社会の構築というテーマの中で、社会資本マネジメントという課題やITS(高度道路交通システム)のあり方などの勉強会をやらせていただいたことがあります。協働理論のようなものはあるが実際の実践をやる機会が非常にまだ少ないのが現状です。色々問題が起きるし、役所にとってはなかなか面倒くさい、手ごわいという感じもあるのか、ルール化やシステム化が進まない。いろんな評価の仕方とか、選択のしかたとか、責任のあり方とか契約のあり方などをどう改めるといいのか、今勉強しているところです。今ちょうど試金石となっているのが、指定管理者制度や市場化テスト。公共サービスの市場規模というのですがね、7兆8千億円ぐらいが市場化テストででてくるだろうと。これに対して、何でも良いから仕事をやれば良いという訳では無いですが、今NPOが果敢にうって出ています。しかし、指定管理者制度でNPOがとれた仕事っていうのは1.8%です。そのうち行政が作ったNPOもあるでしょうから半分くらい。多分1%がNPOが受注したということです。まだ少ないのですが、新しい公と言われて、これが一つの風になれば良いとは思っています。

 もうひとつ大きな変化は、公益法人改革です。去年の12月1日から法律が施行され、これから財団や社団は公共性が発揮できないものはランクが下になるし、解散しなくてはならなくなります。社団や財団法人はこれから半分以上は倒産するということにもなりかねません。公益公共というもの、これから大いに変わるというところで、これから社会的戦略を持って、市民も参加しながら社会的協働をどうやって効率よくやっていくかということなのかと思います。

 最近は、アメリカで問題になっていることも、日本で問題になっていることも、半年か1年くらいの差で 同じ事を討論しています。そのことであまりびっくりすることはなくなったのですが、驚くのは、よく向こうの政府高官に会ったり、会社の課長、部長に会ったりすると、だいたいはNPOの理事を2つや3つ必ずやっています。つまり、自分は役人であるとか、サラリーマンであるとか言う前に、家庭や地域とどう付き合っているのか。特にNPOの理事の2つや3つやっているというのが、自分達が一人前である、社会に責任を果たしているということになるのです。それ以上の地位の人になるとほぼ必ずNPOをやっています。日本ではそうなっておらず、まだ変わり者だとかいうことになりますが、これは世界的に逆なのです。

 これからは、自分は社会に責任をもってという、あるいは一人前の人間だと思う人は、地域で力を発揮していくことだと思います。偉い人とかいうのではなくて、地域にどう尽くすのか、これが基本です。我々NPOというものは成熟した市民社会を作るというのがゴールですから、市民社会の蓄積というのが大切だと思っています。海外に負けるとしたら市民社会の歴史とか層が薄いということかもしれません。我々自身も市民として自己責任を果たしていって、まさに公共、新しい公のために活躍していくということにしなくてはならないのだろうと認識しています。

日 時:平成21年3月4日(水)13:30~
場 所:福岡国道事務所会議室

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