道守ニュース

「道守活動にみる新たな公」セミナーの概要

2009年3月26日

鼎談(ていだん)

※鼎談(ていだん):3人が向かい合って話しをすること

  • (株)西日本新聞会館代表取締役社長 玉川 孝道氏
  • NPOサポートセンター理事長 山岸 秀雄氏
  • 福岡国道事務所長 森山 誠二
山岸 秀雄 氏

「新たな公」について

森山 昨年の7月に、閣議決定という形で決定された「国土形成計画」では、人は都市に集中し、限界集落つまり地域そのものが無くなっていくなど、今後どのように国土を管理していくのかが非常に重大な問題になっています。これらの対応には行政側にも限界があるし、何らかの力を借りないといけない状況になってきていることも事実です。
 今後、地域のコミュニティーが維持出来ない意識の中から、「新たな公」というものをNPOや地域の活動らに結び付けて考えたいと思っています。昨年の土木学会誌に東北大学の奥村氏を座長とした座談会がありました。そのときの資料にみんなの公共の「公」、例えばみんなで使うのが公で、数人でしか使わないのは公共の「共」、つまり共同だとあります。
 昔は社会が複雑ではなかったので、公というものが多かったのですが、価値観の多様化により、共という部分が段々増えてきて、公という部分が相当に減ってきている。これを奥村氏は「新たな公」と理解しているということでした。そういう共という部分を、誰が担うのか。ある程度のまとまった母体が必要です。地域の首長さん、市民、NPO、企業、公務員と、こういった人々が共同でやるといった1つの母体があって、その中で「新たな公」が展開していくということになります。
 私たちの職務でいえば、日常のパトロール、道路の掃除・点検、交通安全のチェック、防災対応などを日々行っています。その中で不都合があれば、調査のうえ即座に対応します。場合によっては新たな改良かバイパスを計画ということも出てきます。こうした道路の仕事について、全て行政がするというのではなく、たとえば道路の清掃など、一部を「新たな公」にお願いするということも可能性としてあると思います。
 「新たな公」について概略をご説明しましたが、「新たな公」についての考えをお話いただければと思います。

玉川 孝道 氏

玉川 孝道 氏
40年生まれ
63年九州大学法学部卒業後、西日本新新聞入社。ワシントン特派員、取締役東京支社長、取締役副社長など歴任。07年より現職
道守九州会議副代表世話人

玉川  一番わかりやすいものとしては、国土交通省の施策である日本風景街道というものがあります。道路づくりの概念から言えば、道路をつくるということは戦後ずっと最優先の仕事だった訳ですね。ところが、風景街道の場合は沿線計画、道路の周りの景観をどういう風にするのかということです。
 バイパスを作ると、そこには赤や黄色など様々な看板ができてすごい景観となる場合があります。日本の道路ほど、特に都市部の道路ほど、どぎつくて汚いなと感じています。日本風景街道の概念は、今までの経済的側面から一歩踏み出し、新しい道路の形を作ろうではないかという話になったと思います。行政では道路そのもの以外の周りの景観まで手が伸ばせるかというとそうではないですよね。九州風景街道のやまなみハイウェイを例にすると、やまなみハイウェイの道路景観は大草原です。ところがこの草原景観の景観は酪農の方々が毎年野焼きをしてつくってくれている。日本風景街道はこのような酪農の協力が無ければ出来ない。しかし、酪農が赤字だらけで倒産している。すると野焼きが出来なくなる。そうすると、今ではボランティアが入ってきて酪農と一緒に野焼きをする。つまり、今まで道路を高速で走らせるという概念から、道路景観を鑑賞してもらうあるいは新しい景観をつくっていくということに一歩踏み出したということになります。これにはボランティアなど多様な主体が入ってくる。これが新しい行政主導の「新しい公」というものにつながると思います。

行政とその周辺の役割分担

森山 風景街道というのは、3年ほど前に全国的に105箇所作られたということですが、問題は誰がそういう景観をつくっていくのかが問題になります。九州の場合では道守という組織がある程度できていて、それなりに回っていますが、他の地域ではいろいろと苦戦しているようです。
 道路行政とその周辺の役割分担などといったものについて何かご意見はありますでしょうか。

山岸 秀雄  氏

山岸 秀雄 氏
46年生まれ
69年法政大学卒業後、日本電信電話公社、(株)第一書林代表、(株)第一総合研究所長などを経て、93年に日本で最初のNPO支援組織NPOサポートセンターを設立。
法政大学客員教授

山岸  道路の利用方法、活用方法を誰が決定していくのだろうかというのが問題になると思います。昔は行政が決めれば、工事が遂行できたと思いますが、今は色々な考え方や市民、所有者の権利の問題が変化してきています。
 この問題については、簡単に到達点が見出せないところですが、一方で市民の社会的動きが高まってきたということから早急にシステムを作って行かなければいけない時期になってきたのではないかと思います。本当に必要な事業において、どう合意形成を図っていくかという技術というか、共通のルールのようなものを、もっとスピードアップしてやっていかなくてはならないと思います。ただ、色々なところで解決の糸口が出てきたので、それをあわせながら、今年は本格的な調査研究をして、正しい公共事業をどう進めていくか、ダメなものはどう止めて行くかと言うことを、一段と進めていこうと今考えているところです。

森山 誠二 氏

森山 誠二 氏
62年生まれ
86年建設省(当時)入省、高崎工事事務所長、内閣官房再チャレンジ担当室企画官等を経て08年7月より現職

森山 福岡空港の例で話しをすると、新空港を沖合に作るのか現空港を活用するのかということを勝手に行政が決める訳にいかない。そこで合意形成プロセスとして、計画の策定や決定の時にパブリックインボルブメント(PI)で住民の意見を聞きながら決めるという方法があります。
 住民参画という点では、ボランティアサポートプログラム(VSP)という形があります。道路管理者と協定して花を植えてもらうことも行っています。
 いい風景を作るというのは意外に難しい作業になります。例えば、幅25mの道路の場合、我々の守備範囲は道路区域内となってしまいます。しかし、道路区域内を綺麗にしつつ、沿道景観とも連携していくということが重要になります。この場合には大いに役割を期待したいところです。また道守は、合意形成の一躍を担うということもあるかと思います。道路行政は単に道路をつくり管理するというのではなくもっと幅が広いと思います。そのような意味で道守活動とも連携することで、道路行政の側から地域の方々へ活躍の場を提供することもできると思っています。

玉川 「新しい公」に関して、行政が風景街道や道守などの支援事業をやりますが、手続き的な問題やどのような支援事業だとフィットするかという問題があります。そこでは、例えば、行政と市民が同じように問題をかかえていた場合にこれらの間に位置する、専門知識を橋渡しする役割の中間的な知識のある人がいないとうまくいかないと思うのです。
 それが新しい公を作っていく時の重要なポイントだと思います。ですから、中間的に専門技術を持ってコーディネイトできるようなNPOとか、そういうものをつくらなければいけない。そこのところを、行政のOBの人たちが入ってくれると、専門知識を橋渡しの役割を果たすことができると思います。

森山 そうですね、英語を日本語に翻訳するように、土木用語を翻訳出来るとかいう意味ですね。防災の観点から、防災エキスパートといった橋に詳しいとか斜面(法面)に詳しい人にお願いして情報をもらうというボランティア組織がありますが、専門知識をもった方を活用するということは大切だと思います。
 ただ、どうやってそういった場を作っていくかが問題ですが、そういう時に道守といったものが良い場になるのではと思います。

玉川 例えば、宮崎交通が開発した日南海岸は、新婚さんが行かなくなって、ガタガタっとなったわけですが、現在、日南海岸を日本風景街道へ登録して活動しています。現在すこしずつ宮崎空港から南の方へずっと綺麗にしていますよね。
 日南とかも綺麗になりつつあるのは、国土交通省だけでなく、県とか自治体が総合政策を行い、民がどうすればお客を呼んで賑わいを作れるか、人が泊まってくれるのかということを事業として行うことがよかったのではないかと思います。それぞれの得意分野のコラボレーションではないかと思います。
 また、四国の四万十川では枝払いとか景観を保つ作業で、安全なところはNPOに任せて、業者はある程度レベルの高い危険なところをやってもらってということを実際やり始めています。そうすることで、その地域の小さなNPOですが、財源力を持ったり活動力を持ったりということになります。そういった新たな公という場を作る必要があると思います。

様々な主体の連携

森山 アメリカではボランティアとか社会貢献の組織があり、そこに個人の人が参加していますよね。そういう観点で先進的な事例あるいは期待などあればお聞きしたいのですが。

山岸 例えば防災について、NPOをもっと前に出して防災システムを組もうとしても、行政側は防災計画を完璧に作っているから結構だと言います。ただ現実には動ける人がいない。その部分が一気にNPOが取って変われるわけではないのですが、そこを上手く転換していかないと防災そのものが出来ないということが歴然とした事実なのです。
 それから中間支援組織についてですが、これが一番必要だと各省も今までのレポートで言っています。しかしそこから中々進まない。行政が付き合う時は個々のNPOと付き合うのではなく、中間支援組織を通じて個々のNPOと付き合うべきと書いてはあります。実際には中間支援組織に本来500万で頼むところを、個々のNPOに直接80万で頼んだりしているため、なかなかNPOが育たないということが多いのです。中間支援組織を通じてお願いするということが最も良い形だと私は思います。
 どんな人間でも社会貢献したいというのが人間の本質です。そういう人間を津々浦々から集めて来るということがNPOの役割なのです。それをまとめるのが中間支援組織だということになります。そこと行政はパートナーシップを組んでいくといいと思います。このようなことを福岡国道事務所のような力のあるところとやってもらえたらと思います。

玉川 行政と民の話し合いで中間的組織が必要だということですが、限界集落は皆さんが考えている以上にひどい状態なのです。そのようなところは活性化とか新たなことに参加する力がなくなってしまう。そういう時に、民と行政とありますが、もう1つが大学なのです。学生さんの活力などを利用しながら、大学も地域とどうあるべきかということを真剣に考えています。行政と民と関わるもう1つの大きな素材だと思いますので、そういう認識をもってやることも必要だと思います。
 九州には9本の風景街道がありますが、景観と言っても景観を形成する風景を綺麗にすればいいという話ではなくて、看板などの処理などはやはり専門家でないと分からないと思います。そこに大学に入ってもらう意味があると思います。今後九州風景街道推進会議の中に9本の風景街道グループにそれぞれ地元大学の景観の先生に入ってもらって、それを踏まえて評価してもらい景観の評価基準を作っていこうと考えています。
 それともう1つの問題は、財源の問題です。行政も持続力がなくなってしまうことは明らかです。色々なものに手を出すなよという雰囲気が出てきています。  また、行政が苦手とする仕事もあると思います。民に任せた方が良いこともあるとおもうのです。行政がやるとまずいことも民だと出来ることもあります。これらを考えることも必要と思いますね。

森山  ここで、今日お越しいただいているNPOはかた夢松原の会の川口会長からも一言いただければと思います。

川口(NPOはかた夢松原の会会長) 今日は大変勉強になりました。今まで色々と教えられたことを情報交換したいと思います。私の考えでは、行政は市民が作っていくものだと思うのです。私たちは仕事ではないので、NPOとして社会参加をしています。
 先程のお話しで、大学が良いとありましたが、福岡市内の大学のある事務局長さんに話を聞くと、学校は経営するのに大変だから、そんなことまで関われませんという考えだったのです。それくらい、それぞれの立場ではそれぞれ問題を抱えてらっしゃいます。
 また、看板が多すぎるからということで条例を作り整理しているところもあります。オーバーになってくると市民も市民で何とかしないといけないという考えになります。
 ですので、行政と市民と研究者の人とで手をつないでどうやって連携してやっていくのかなかなか難しいのです。各地域で歴史と文化をもっていますし、みんながそれぞれ違うのです。何かやるとき、相手のところに土足で踏み込まないで、しっかり知って、何回か顔を合わせて、仲良しになってから心と心をつなぐものと思います。だからやっぱり時間を大切にしないといけないと思いますね。

須本(NPOはかた夢松原の会) ナショナルトラストという言葉がありますが、具体的に外国における仕組みや市民の意識など歴史的なところを勉強し、そして日本の風土や文化ももうすこし勉強しないと取り組みはなかなか難しいなと思いながらお話を伺いしました。
 かなり時間は掛かりますけども楽しくみなさんが交流できるところからで良いのではないかと思っています。ただ、少しシステムとかいうものをきちんと整えないといけないと思います。

NPO夢松原の会(事務局) 実際、言われるほどNPO個々はまだまだ社会に受入れられていないと思います。そういう風な元々の問題、それとそれぞれの専門性であるとか、あるいは活動基盤の問題があると思います。

玉川 アメリカのNPOはなんとなく民間が集まっている集団じゃなくて、専門家集団を必ず抱えています。それから言えば、日本のNPOはまだまだよちよち歩きだよということです。しかし、よちよち歩きを受け入れなければしょうがないのです。やがては大学専門家達に、技術的なことは行政の専門家、橋の専門家という風にいろいろな人が入ってきて、作っていく。そうやって強固なNPOになっていくと思います。

これからの行政に期待すること

森山 最後に、公共事業世論や道路特定財源等、何かと話題になりましたが、行政側にこうあってほしいというようなことがありましたらお願いします。

山岸氏 私は、「新しい公」は社会全体で作っていくものだと思いますが、これには行政だけでなく、当然NPO、市民も参画していくわけですけど、そのルールつくりを円滑にやるような仕組みを作っていきたいと思っています。
 私はNPO側の代表として、行政の代表とどういう風に合意形成を図るかを、処理委員会とかを作って、お互いの考えを出し合い、透明性の高いシステムをつくる必要があると思います。そんなに簡単ではないと思いますが行政の方も含めて誇りをもって仕事ができるといいと思います。地域の思いも、言えば通じるという場が無いので、なんでも反対みたいにとりあえず言っているということはあるのではないかと思います。
 アメリカ行ったとき一番感じたのは、アドボカシーという言葉です。これを日本で流行らせたいと思いました。つまり市民が責任をもって政策提言していくのです。市民側が作る政策提言はNPOにとって一番大事なことで、ただ反対するだけではなく、どういう理由だからこうすると言えないNPOは伸びないと思います。

玉川 やはり、道路行政、国土交通省の仕事全体が一つの大きな曲がり角にあるのだと思うのです。全ては国がやるのだというようなところから、どう変えていくか、ものすごく大変な作業になると思います。
 江戸時代に伊藤仁斎という人がいましたが、その人の言葉の中に公共の道というものがあります。この道は人の道の話で、人間の暮らしていく上での道、ただし同時に、みなさんが関わっている道、つまり道路というものによく似ている。人間が暮らしをはじめてから、道というものはずっとつくられています。その道で人々が出会ったり、交わったりネットワークを作って、そこに街ができたりしていくわけです。そういう道というのは古来、みなさんが向き合っている仕事は、正に社会の公共資本の中のひとつだという誇りをもってほしいと思います。強いて言うと、伊藤仁斎がいう「市民を愛し、非は非とし、是は是とし、つまり人間関係をつくりなさい。」ということです。それは、民という第三者ではなく、国民なり利用者との話を聞いてそれをもとに道というのは、ずっとできていく。それと、やはり皆さんの行政側の国民を見る時の言葉遣いに注意し、親しみをもつということが大事です。みなさんも親しみを作っていく努力が必要です。そうしていかないとNPOが育たないし、行政も育たないと思います。

森山  それでは時間が参りましたので、これで終了いたします。ありがとうございました。

日 時:平成21年3月4日(水)14:30~
場 所:福岡国道事務所会議室

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