大野川は、沿川の背後地の宅地化や地域開発に伴って人口・資産の集積が進行し、都市部における貴重な水と緑のオープンスペースとして多くの人々に親しまれているとともに良好な水質が保持されており、大野川が有する治水・利水・環境機能の果たす役割は益々重要なものとなっている。
このため、河川の維持管理や災害復旧の実施にあたっては、治水・利水・環境の視点から調和のとれた所期の機能を維持することを目的として、環境調査・モニタリング調査・河川水辺の国勢調査結果等を踏まえ、瀬と淵をはじめとする良好な自然環境を保全すること等を考慮し下記の事項を行う。
1.河川管理施設の維持管理・災害復旧
河川管理施設の機能を十分に発揮させることを目的として、現有機能の把握・評価を行った上で、機能の低下を防止するための復旧・修繕、機器の更新並びに局所的に堆積した土砂等の撤去を行う。河川管理施設の機能低下及び質的低下の原因としては、洪水等の外力による損壊と経年的な劣化や老朽化によるものがあるが、前者については速やかに復旧・修繕等の対策を、後者については計画的に補修・更新等の対策を行う。
大野川特有の課題である40〜50年前に造られた水門・樋門等の老朽化及び河床深掘についても、河川巡視、点検を実施して状況を把握し、必要に応じた対策を行う。また、洪水・高潮時等において操作を行う必要がある水門・樋門、排水機場等の施設については、的確な操作が実施できるよう操作環境の改善及び操作の自動化・遠隔化を行う。
2.樹木等の管理
大野川の河道内の樹木等の管理は、洪水時の流下能力を維持することを目的として、繁茂状況等のモニタリングを行うとともに、周辺河川環境を考慮しながら伐採及び除草等の維持管理を行う。
3.河川空間の適切な利用調整・管理
大野川の河川空間は、都市部における貴重な水と緑のオープンスペースとなっていることから、今後地域社会からの河川利用に関する多様なニーズに対しては、利用者間の調整はもとより治水・利水・環境に配慮して適切な管理を行う。
また、新たな工作物の設置についても、河川整備基本方針及び本計画並びに他の河川利用との整合を図りつつ、治水・利水・環境の視点から支障をきたさない範囲で判断し対処する。
さらに、河川利用を妨げる不法投棄・不法占用・不法係留等を減らすため、河川巡視を強化し必要に応じ市町村や警察と連携し、監督処分を含めて対応を図る。
4.砂利採取の調整
大野川の砂利採取については、河床変動状況から判断して河床低下傾向にある区域について、原則的に砂利採取禁止区域を継続して設定し、削減する方向で対処するとともに、将来的には原則禁止を目指す。
しかし、大野川の河口付近等の局所的な堆砂が流下阻害となるところについては、河川環境、河床維持、賦存量を総合的に判断して対処する。
5.河川情報の高度化及び提供
近年の出水において内水被害が頻発しているとともに、整備途上段階における施設能力以上の洪水や基本高水を上回るような洪水が発生した場合には壊滅的な被害が予想さ
れることから、洪水・高潮等の緊急時に排水ポンプ車の配備等の防災対策を迅速・的確に行う必要がある。また、水門・樋門等の操作を行う人の高齢化に伴う後継者の不足も問題となっている。
このため、台風時や夜間などでも常に河川及び河川管理施設等の状況を監視し、遠隔操作により水門・樋門等の操作を確実に行うことを目的に、平成5年出水等で内水により大きな浸水被害が発生した地域において表2−6に示した光ファイバー網の整備及び CCTV(監視カメラ)、遠隔制御装置などの施設整備を行う。
また、洪水等の情報の提供は、被害を最小限に抑えるための方策として極めて重要である。このため、洪水時等は河川情報システムにより流域内の雨量や河川水位等の河川情報の収集を行い、水防警報を発令する等、関係機関とも連携して水防体制の維持・強化を図り、河川沿川の住民に対して洪水予報等の防災情報を提供する。この際、受け手となる一般住民にとってわかりやすいよう工夫を行うとともに、時空間的な情報の網羅性の向上に努める。
さらに、迅速かつ的確な水防活動が実施できるよう、老朽化が進んだ水門・樋門等の施設や堤防の整備状況等を記載した重要水防区域図の作成や、氾濫区域、防災情報を掲載したハザードマップ等の作成を行い、水防団をはじめ地域住民に対し危険個所を平時から周知するとともに、防災関係機関や地域住民と連携して大規模洪水氾濫を想定した危機管理計画の策定を推進する。
表2−6 河川情報の高度化