
図1―1 大野川流域概要図
大野川流域の年間平均降水量は約2,200oですが、その約35%が6月中旬〜7月中旬にかけての梅雨期に集中しており、引き続き8月〜9月の台風期となり、この4ヶ月間の降水量は年間平均降水量の約65%に達します。また、山間部では年間降水量が4,000oを越える年もあり、日本の年間平均降水量の約1,700oと比較すると多くなっています。
流域の地形は、上中流部で台地、丘陵、谷底平野が形成され、その中を大野川が穿って流れ、滝、渓谷が多くなっています。また下流部では、河岸段丘と沖積平野が形成されています。
流域の地質は、上中流部に阿蘇熔結凝灰岩が広く分布し、表土は黒色の火山灰で覆われています。また、下流部では、川筋に砂礫・粘土等の沖積層が分布し、右岸山地には変成岩、左岸丘陵地には砂礫層等が分布しています。
上流域から中流域にかけては、火砕流台地を緩急を繰り返しながら流下し、白水の滝や陽目渓谷等の景勝地を形成しながら、竹田盆地に出ています。竹田盆地には本川を中心にほうき状に支川が集まり、盆地の中を貫流しています。この盆地を含む流域一帯は阿蘇熔結凝灰岩の地質等のため、降った雨が一度に流出せず地下水としてためられたうえ湧水となって河川を潤しており平常時の流量を豊かにしています。湧水のうち緒方川流域の竹田湧水群が名水として特に有名です。また、景勝地である原尻の滝周辺は河岸段丘が発達し、緒方平野と称される耕作地が広がっています。本川に緒方川が合流する地点では本川最大の滝、沈堕の滝があり、犬飼付近までは川幅はせまく流れも速くなっています。
下流の戸次付近では、大部分の支川が集まり流水も多くなっています。川幅は広く緩やかに蛇行し、高水敷も形成され、河川特有のオギの群落が多く見られるようになります。流れも緩やかで戸次,高田地区の穀倉地帯や大分市東部の市街地である鶴崎を経て別府湾に注いでいます。また、乙津川が本川から分派し本川の西側を流れ下っており、水辺はヨシの群落が形成され、大部分が感潮区間です。
大野川の上、中流域の人々は、稲葉川、玉来川、緒方川、三重川等の支川にその生活の場を見出し、谷底平野の水田と段丘面上の火山灰質の畑地で生活してきました。このため、"山はへだて、川はむすぶ"の言葉通り大野川を中心に連帯感を強め、自然と独自の文化圏を形成してきています。
この大野川流域には、後期旧石器時代の岩戸遺跡、平安時代後期の菅尾石仏、鎌倉時代後期の犬飼石仏等の仏教文化や、神角寺等の名刹が多くあります。また、岩戸橋、虹澗橋等の数多くの石橋が江戸時代末期から明治時代にかけて築造され、現在もその堅固、優美な姿を残しています。
河川水の利用については、農業用水として約15,000haに及ぶ耕地のかんがいに利用され、また、大正9年に建設された軸丸発電所を始めとする10ヶ所の水力発電所により総最大出力41,830kwの電力の供給が行われ、さらに工業用水として大分臨海工業地帯等で、水道用水として大分市、竹田市等で利用されています。
大野川流域の産業活動は、一次産業が主体であり、上流域は広大な台地,原野,水に恵まれ、農業及び林業が盛んです。
水産業は、アユ,コイ,フナ,ウグイ,ウナギ等を中心とする内水面漁業が主です。
工業は、大野川河口付近一帯に鉄鋼,石油精製・石油化学,火力発電などが進出し、さらに、近年ソフトウエア,バイオ技術等の最先端の生産活動が盛んとなっています。
大野川流域は、阿蘇くじゅう国立公園、祖母傾国定公園、祖母傾県立自然公園、神角寺芹川県立自然公園等の豊かな自然環境に恵まれた河川です。