カッパが恩返しや人助けをする話もある。直方の勘六橋(かんろくばし)が木橋であった頃、橋の近くを住み家にしていたカッパの頭に、橋から石が落ちて動けなくなっていた。そこに、おすみという河原に小屋を作って住んでいた薄幸の女性が通りかかり、ガマの膏薬をぬって助けた。カッパはその恩に感じて、魚をよく届けていた。しかし、おすみはまもなく重い病気にかかって、誰一人として看取る人もなく死んだ。カッパは、河原の白い花を咲かせたススキを集めておすみのなきがらを覆った。

― 香月靖晴著『「遠賀川」流域の文化誌』より ―