カッパと相撲の話は多い。添田町(そえだまち)中元寺(ちゅうがんじ)ではカッパの話がいくつもある。カッパが牛馬を川に引きこんだり、田畠を荒して人びとを悩ませるので、瀬成(せなり)の神が怒った。神の威力をおそれたカッパはおわびとして、相撲をとってなぐさめたという。ちなみに瀬成神社の相撲は津野(つの)、猪膝(いのひざ)とともに、田川の三大相撲として知られていた。 稲築町(いなつきまち)の話である。親が子どもに話す時、カッパから「相撲をとろう」といわれた時は、「人間の作法でとろうと答えろ」と教えた。「相撲をとる時、きちんと頭を下げて挨拶すると、カッパの頭の皿から水がなくなるので、カッパの力は弱くなる。だから負けることはない」というのである。道徳教育のひとつであったのだろうか。 ― 香月靖晴著『「遠賀川」流域の文化誌』より ― ![]()
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