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国土形成計画シンポジウム

「九州・21世紀の挑戦 〜日本の新しいカタチと広域交流圏の形成〜」

●日 時:平成18年3月15日(水)13:30〜16:30
●場 所:福岡市・天神エルガーラ
 日本の高度経済成長を支えてきた全国総合開発計画(全総)が、国と地方が一つになって地域活性化を目指す「国土形成計画」へと転換し検討されているのを受けて、新しい九州の在り方を市民レベルで考えるために開催されました。多彩な専門分野の代表によるパネルディスカッションでは、県境を越えた広域交流で九州の「地域力」を高める一方、東アジアとの連携強化への方策などが積極的に議論されました。

【基調講演】川勝平太氏(国際日本文化研究センター教授)
■圏域には、それなりの経済力がいるが、それに加えて、各地方が持つ「文化力」を考慮すべきだ。文化とは、衣食住など目に見える生活と、宗教や価値観など目に見えないものとを合わせた人々の「生き方」のことであり、それがほかをひきつける魅力をもつとき「文化力」となる。文化力は地方が自立して豊かな社会をつくっていく原動力になる。
■将来的には九州は「東アジア〈海〉共同体」の中心という視点を持ち得る。九州、中国、四国が出合うのは関門海峡だ。インフラ整備を考える場合、例えばここを起点に環九州新幹線、環九州自動車道など、まずは環九州交通網を整備し、九州を一つにし、環瀬戸内交通網を整備していく。県を越えて九州が一つになり、中央と協働すれば「海の州」は実現可能だ。
 
【問題提起】小川全夫氏(九州大学大学院人間環境学研究院教授)
■今の世界経済はアジアに重心が移っているので、アジアに近い九州は地の利を生かすべきだ。東京からの日帰り出張圏は韓国までだが、福岡からは、それに中国・上海が加わる。九州は海洋州として物流のメリットを生かす必要がある。
■大きな世界循環の中で地域内循環の活性化と国際的協働をどう促進していくかも問われている。アジア市場の協働を考えれば、人が移動して働くことが増え、そのため当然、共通した資格制度や取得も必要になる。私的提案だが福岡市に「アジアエイジング(加齢)戦略研究センター」を設置することも、一つのアジア戦略だと思う。  

【パネルディスカッション】
石原進氏(JR九州代表取締役)
■産業界はどんどん東アジアに進出している。これからは学や知の交流を積極的に進めていくことが課題になる。

伊藤一長氏(長崎市長)
■四月から十月まで市内全域で「長崎さるく博」を開催する。「さるく博」は、通常の博覧会と異なり、今長崎にあるものを生かして、行政と市民が一体となって、二十一世紀梨の都市観光の新しい形を発信しようというものだ。そこでは外国から人が来る仕掛けをたくさんつくっている。このような取り組みを九州全体に広げれば、大きな魅力の一つになるのではないか。
■九州は東アジアをはじめとした海外との長い交流の歴史があり、それぞれの地域で培われてきた独自の文化を、どう連携させて生かすかが大事である。

梶山千里氏(九州大学総長)
■九州は一つというが、学術分野でも進める必要がある。それぞれの大学間の連携や協力を強くすることで、各大学が個性的で魅力あるものになる方法を、真剣に考えたい。

松田美幸氏(麻生塾法人本部ディレクター) 
■人は情報を発信するところに魅力を感じるものだが、情報は人についてくる。東アジアをリードする多様な人々がいて、発信することが大切だ。

辻原俊博氏(国土交通省大臣官房審議官)
■九州は東アジア連携の拠点になる可能性は高い。そのためにはインフラを整備し友好的に使っていくだけでなく、留学生など多様な人材をアジアから受け入れることも重要になってくる。地域の個性を生かし、世界から人々を引き付ける魅力ある地域づくりが必要だ。
■九州の外国人観光客はまだまだ少ない。東アジアの観光客、特に中国のリピーターを増やす必要がある。これからは知的交流が重要になってくる。知的交流センターをさらに強化し、大いに活用することだ。

コーディネーター:菊池恵美氏(西日本新聞社編集局長)
■北九州、熊本、長崎など九州の各都市もそれぞれ拠点機能を持っている。その機能を分担し互いに特徴づけることで、九州が一つになるのではないか。例えば、佐賀、福岡、北九州の北部三空港が機能を分担し、旅客と貨物の効率の良い運航を考えるというような。

 

以上、採録掲載紙より抜粋

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