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国土形成計画シンポジウム

「地方の時代に自立と交流をめざす九州」

●日  時:平成19年2月27日(火)13:30〜16:30
●場  所:熊本市・熊本全日空ホテルニュースカイ
 中山間地域と都市部の自立と交流を促すために九州の広域地方計画に何が求められるかなどを話し合う国土形成計画シンポジウムが開かれました。安富正文国土交通事務次官による基調講演に続き、小川全夫山口県立大学大学院教授による特別講演、その後のパネルディスカッションでは、新しい価値観と視点に立った九州圏の広域地方計画づくりについて白熱した議論が展開されました。

【基調講演】安富正文氏(国土交通事務次官)
■平成18年11月に、国土審議会計画部会による「中間とりまとめ」が報告されたが、ポイントは「人口減少が国の衰退につながらない国土づくり」「東アジアの中での各地域の独自性の発揮」「地域づくりに向けた地域力の結集」「多様で自立的な広域ブロックからなる国土」の4つ。
■各広域ブロックの戦略的取り組みとして、「シームレスアジアの実現」、「持続可能な地域の形成」、「災害に強いしなやかな国土の形成」、「美しい国土の管理と継承」、「新たな公による地域づくり」の5つの視点を示している。

【特別講演】小川全夫氏(山口県立大学大学院教授)
■農林水産品の生産拠点というこれまでの認識に対し、中山間地域が果たすべき役割を公益的な機能として国の経済の中に位置づける必要がある。
■中小都市と周辺の中山間地域を田園都市と捉えた一体的な整備も大切な視点。
■九州圏を一つにまとめ上げる地域内交流がどう図られていくのか、国際的な交流に対して、いかにシームレスにその地域が取り組むことができる計画にしていくのかがポイント。

【パネルディスカッション】
小川全夫氏(山口県立大学大学院教授)
■少子高齢化の中で自給自足が困難だからこそ交流が必要であり、そこで大切なのは交流ができる仕掛けをつくることで、その必須条件は交流を多元的に行っていくこと。
■開発権を売買することで、税金と異なる形で、お金が中山間地域にまわる仕組みの検討が必要。
■文化や福祉といった暮らしを支えるインフラの整備については、九州のモデルとして提起するようにしていただきたい。

徳野貞雄氏(熊本大学文学部教授)
■都市農村交流については都市が農村に手を差し伸べるという発想ではなく、むしろ農村がなくなったら都市はどうするのかといった視点で考え直して欲しい。都市農村交流は、経済効果に目が向いた他人へのサービスだけでなく、都市部に他出している子供達との関係を再強化する“身内との交流”を重視することが、現実的な農村維持に繋がる。
■中山間地域には昔からムラ機能という暮らしに密着した「総合的な公」的部分が残っているわけだから、むしろそれを現代的にどう活かしていくかを考えることが重要。
■第一は、人口・世帯の減少を前提とした「縮小型地域づくり」に、勇気を持って望んで欲しい。第二に、現代の車社会を活用しながらも、車から人を引きずりおろすことも考えて欲しい。これが実現しないと地域の賑わいも発生しないし経済にも結びつかない。

鳥飼香代子氏(熊本大学教育学部教授)
■都市計画の対象外だった地方都市を、周辺中山間地域も含んだ日常生活拠点として再生していくという位置づけが重要になる。
■二地域に居住する、あるいは週末住民も、今後かなり増えるのではないか。例えば天草に夏休みなどは長期に滞在する、あるいは週末に出かけ地域住民として飲んだり食べたりしながら地域の清掃活動を行う、半分住民のような役割に積極的に位置づけて地域活動に参加してもらうことも非常に重要になる。
■九州ブロックの中心には十三の中核都市でなく、田園都市を考えて欲しい。そのためには、中小都市再生プロジェクトの立ち上げも是非お願いしたい。

宮崎暢俊氏(小国町長) 
■地域づくりの一番の基本は、地域の資源を活用していくこと。資源には、自然や農林産物、地域の歴史を刻む遺跡など、ありとあらゆるものが考えられる。大事なことは、そうした資源を地域づくりという地域経営の中で活かしていくという考え方。
■田舎について自ら学び自ら交流することが、地域の自立にとっては必要。
■自然や農林業の役割、日本人の暮らし方、豊かな暮らしの実現のためにはどうすればいいのか、こうした論理も今回の計画には是非反映させて欲しい。
■九州はいま、自動車産業、情報機器産業が立地しているが、できれば大都市周辺だけでなく地方都市・農山村にもそういう拠点を作る方向で考えて欲しい。

大黒伊勢夫氏(国土交通省九州運輸局長)
■九州には豊かな自然環境がありそれを観光資源としてどう利活用していくのか、また、過疎地と都市部、九州における東西・南北の格差にどう対応していくのか、といったことが重要な課題
■どのように地域に必要な交通サービスを確保するかについては、利用者も参加してニーズに即したあり方を考えていくことが大切。
■九州で長期滞在、二地域居住型の観光の実証実験を行った。体験など参加型の観光のニーズに対応した地域での活動メニューが必要。実験では、さらに地域案内人(コンシェルジェ)が必要との課題の指摘もあった。
■国際観光交流は、中山間地、離島を含めアジアに近い九州ならではのものが可能。

 

以上、採録掲載紙より抜粋
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