猫坂峠の下にあるので付けられた名前。昔、夕方にこの峠を人が通ると、急に道が消え、旅人たちは行方不明になるという恐怖の峠であった。人々は魔物がいると信じ、それを退治するため、三人の猟師を選んだ。彼らは三日三晩待った。三晩目の真夜中、闇のなかに、六つの目が、ピカピカ光りながら近づいてくる。猟師は弓に矢をつがえ、一斉に放った。ところが四つの光は狂いまわっていたが、やがて見えなくなった。翌朝、猟師たちは二匹の死んだ猫を見つけた。しかし、残った一匹はその後姿を見せなくなった。たたりを恐れた村人たちは、この峠脇に松を植えた。人々はその後この峠を猫坂峠と呼んだ。松も大きくなったが、その後松食い虫のために枯れて伐られたので、その姿はない。 |