大野川水系河川整備計画(案)
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第2節 河川の利用及び河川環境の現状と課題

1.河川水の利用

 河川水の利用としては、大野川本川においては工業用水として約7.37m3/sec、水道用水として約0.69m3/sec、農業用水として約0.49m3/secの計約8.56m3/secが利用されています。また、派川乙津川においては工業用水(塩水含み)として約14.33m3/sec、農業用水(乙津川自流取水)として約0.43m3/secの計14.76m3/secが許可されており、大野川本川及び派川乙津川で合計約23.32m3/secの許可水利があります。これに対して、白滝橋地点における過去35ヶ年間(昭和38年〜平成9年)の平均渇水流量は19.7m3/sec、平均低水流量は28.5m3/secです。大野川は、豊富な水量を誇っており、近年渇水被害については起こっていませんが、今後、近年の全国的な少雨化現象による流量減や、社会情勢等の変化によっては水不足が懸念されます。

 よって、大野川の有する清らかで豊富な水を永く保つために、流域全体で一体となって健全な水循環系の保全を図る必要があります。

2.河川空間の利用

 河川空間の利用状況については、平成9年度の河川水辺の国勢調査によれば、年間推計約32万人の沿川住民に広く利用されており、水面は手づくりイカダ河下り大会などの観光イベントやカヌー、魚釣り等の利用の場として、また、堤防は桜づつみ等の憩いの場、高水敷はスポーツ広場、ゴルフ場、採草地として利用されています。特にスポーツ広場は、大野川本川と派川乙津川に整備され、多くの人々に利用されています。また、派川乙津川は、市民の憩いの場となっており、大野川本川からの浄化用水の導水路は、ヘラブナ釣り、水遊び等を楽しむことができる親水広場として親しまれています。

 このように多くの人々に利用されている大野川ですが、近年、沿川にも市街化の波が押し寄せ、都市部における貴重な水と緑のオープンスペースとして、周辺住民に親しまれる場のさらなる確保が求められています。さらに人々が水や自然に親しめるよう、特に未来を担う子どもたちが、自然環境とのふれあいや体験学習の場としての河川に親しむ施設の整備も求められています。

 なお、これらの施設の整備にあたっては、「桜づつみ愛護会」等の住民ボランティア団体との連携、支援を行うことや、まちおこし、地域づくりと一体となった川づくりを進める必要があります。

手づくりイカダ河下り大会
(大野川14/8付近)
桜づつみ
(大野川2/8付近)
スポーツ広場
(乙津川6/2付近)
ゴルフ場
(大野川14/0付近)
採草地
(大野川11/4付近)
導水路
(大野川10/8付近)

3.水質

 一方、水質はBODの75%値で見ると大野川本川の白滝橋地点及び鶴崎橋地点において約1r/リットル以下、派川乙津川の海原橋地点で約2r/リットル以下と良好なものとなっています。なお、派川乙津川においては、工業排水・家庭排水等によって河川水質が悪化した時期もありましたが、大野川本川からの浄化用水の導水等により、現在では環境基準もほぼ満足しています。しかし、今後も良好な水質を満足していくためには、自治体をはじめ流域全体で、生活雑排水対策等に取り組んでいく必要があります。

図2―1 大野川の各地点における水質(BOD75%値)の経年変化

4.河川環境

 大野川本川の河川環境については、床固めなどの横断工作物が数カ所で設置されていますが、回遊魚であるアユが上流まで多く生息していることから、遡上・降河を妨げていないと推測されます。また、植生については、人工草地やグラウンド等を除いた、自然植生の約7割はオギ群落で占められています。

 大野川本川の河口から11k200付近までは感潮区間となっており、感潮区間末端の瀬は、水産資源保護法に基づく大分県内水面漁業調整規則により保護水面として指定されるなど良好なアユの産卵場であり、9〜12月が産卵期となっています。

 河口から川添橋付近においては、河道の湾曲も緩やかで、高水敷幅も狭く、低水護岸が整備されており単調な水際線となっています。河口に僅かに見られる干潟にはハクセンシオマネキ等のカニ類、ゴカイ類、貝類等が生息し、シギ類、カモメ類の餌場・休息場となっています。水域にはボラ、ハゼ類等の汽水・海水魚が多く生息しています。高水敷には人工草地が広がっているほかはオギ群落が優占し、セッカなどの鳥類や、カヤネズミ等が多く見られます。

干潟
(大野川0/6付近)
川添橋付近のワンド
(大野川7/0付近)
アラカシ林
(大野川13/2付近)
アユの産卵場
(大野川10/8付近)

 本川の川添橋付近より上流は、河道の湾曲も大きくなり、瀬や淵、ワンドも見られ多様な水際線が形成されています。また、高水敷も広くなり、自然河岸がほとんどを占め、下流から上流にかけてオギ群落、竹林やツルヨシ群落、ヤナギ林が繁茂し、13k付近に分布するアラカシ林はサギ類の集団ねぐらに、白滝橋付近の河原はコアジサシの集団営巣地となっています。水域には、アユ、ウグイ、カマツカ等が多く見られます。

 派川乙津川の河川環境を見ると感潮区間が多く、自然植生の殆どはオギ群落とヨシ・アイアシ群落で占められています。

 河口から高田橋付近までが感潮区間であり、低水路幅は狭く、河床は、シルト質土が多く、瀬や淵は見られません。また、水際は、ヨシ、アイアシ群落が優占し、オオヨシキリなどの鳥類の生息・繁殖場となっています。高田橋付近から分派地点までは、水辺から高水敷にかけオギが繁茂しています。

 このように大野川には、生物の多様な生息環境等の貴重な河川環境が存在しており、この河川環境を保全し、共生していくためにも、河川環境に関する情報を系統的に収集整理しながら様々な生物にとって棲みやすい自然に近い川づくりを行う必要があります。また、近年の河川利用等により乙津川のハマサジ等の群落が消滅する等の状況も見られ、今後河川敷内の整備にあたっては、これらの生息環境を保全・復元していく必要があります。さらに在来種の保護にも注意をはらい、調査・観察する必要があります。

オギ群落
(乙津川3/6付近)
ヨシ群落
(乙津川3/8付近)
オオヨシキリ
(大野川1/2付近)
ハマサジ
(乙津川1/2付近)
 
 
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