「道守」は「暮らし守」

国土交通省
技監
大石 久和
この度、道守九州会議が設立されるにあたり、皆様のこれまでのご努力と熱意に心より敬意を表します。
道路は、私たち「個」の日々の暮らしを支える最も基本的な「公」の社会資本です。「道守」は、個を支える公の道について、植栽や歩道のあり方、あるいは道づくりを市民が主体となって考え、行政と協働して実践されるものと聞いております。
今、地域の活性化が課題となっていますが、それには、まず何よりも、地域に住んでいることが誇りに思えることが不可欠です。そのためには、花と緑が多く、清潔で、歩きやすく、美しい風景があるなど、道路がよい状態に保たれていることが重要な要素だと思います。その意味では、「道守」は、地域の誇りある暮らしを守る「暮らし守」とも言えるものでしょう。
皆様方の活動が発展し、より良い地域と暮らしに大きく貢献していくことをお祈りいたします。
道の再生へ向けて

九州大学大学院
人間環境学研究員
助教授 安立 清史
道はそこに住む人びとの人生や社会観を反映しているものだと思います。何もない荒涼とした原野に小さな一筋の道を見つけた時に、私たちは大きな喜びを覚えます。小さいけれど人間を支える営みだということが感動的に伝わってくるからです。
道が産業化や工業化を支える道路になっていくと、人のためというより産業のための道路としてとらえられるようになり、今、私たちは道の行方を見失いかけています。道守という言葉の中に、道を作り、守る地域の人びとの思いや行動が再生してくることを期待したいと思います。
美しい国 日本へ向けて

建築家
松岡 恭子
日本社会は「不要なものはつくらない、必要なものはきちんとつくる」という方向に進むべきで、「とにかく安くつくる」方向に流れていくのは危険なことです。今までよりもっと粗悪な構造物が、この国を覆っていくかもしれないからです。
これからは、一つ一つの構造物にもっと気持ちを込めてつくり、本当の価値あるものを後世へ残していくべきです。そしてそれらを大切に使い、守り育てながら活用していくことが重要です。つくる側と使う側が一緒になって、私たちの国土を子孫に手渡す努力を積み重ねれば、きっと美しい国日本が近づいてくると信じます。
九州の道を共に育てましょう

九州地方整備局
局長
岡山 和生
いま、市民参加型の行政が求められています。このような中、今回設立された「道守九州会議」が、市民の方々と行政がそれぞれの役割を果たしつつ「協働」して道をつくり、道を管理していくひとつの場として、活用され発展することを期待します。
ボランティア団体の方々やNPO団体の方々との連携が一層深くなり、市民の皆さんに道をもっと近くに感じ、もっと道を知ってもらえるよう、共に汗をかいていきましょう。
安心して利用できる道づくりは、私たちの手で管理し、育む文化です。
宗 茂
走っていて気持ちがいい道。それはきっと、歩いていても、車椅子であっても、気持ちよく利用できる道です。マラソンや九州一周駅伝とともにずっと道を見つめてきましたが、安心して走りに集中できる道には必ず使う人の思いやりが息づいています。
たとえば、私たちが日頃の練習でよく使う松林のコース。シーズンを問わず散歩を楽しむ人も多いその道では、まるでそこがわが家の一部であるかのように、いつも誰かが掃除や草刈りをしている姿を目にします。道と、道を取り巻く環境づくりは、私たちひとりひとりがこの手で管理をして育てていくべき文化です。
多くの道守たちが道守九州会議の発足をきっかけに集い、語らいを重ね、道の可能性がますます拓かれることを期待すると同時に、私もまた走りを通して道との語らいを続ける、道守のひとりでありたいと思います。
1953年生まれ。佐伯豊南高卒、1971年旭化成入社。1978年別府大分毎日マラソンで日本人初の2時間10分台を切る好記録で優勝。モントリオール、モスクワ(日本不参加)、ロサンゼルスの3回連続五輪マラソン日本代表。引退後は指導者として活躍。谷口浩美、森下広一ら五輪代表選手を育てる。延岡市在住。