大野川水系河川整備基本方針

平成11年12月1日

建設省河川局

目次

  1. 河川の総合的な保全と利用に関する基本方針

    (1) 流域及び河川の概要
    (2) 河川の総合的な保全と利用に関する基本方針

  2. 河川整備の基本となるべき事項

  3. (1) 基本高水並びにその河道及び洪水調節施設への配分に関する事項
    (2) 主要な地点における計画高水流量に関する事項
    (3) 主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項
    (4) 主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項

1. 河川の総合的な保全と利用に関する基本方針

(1)流域及び河川の概要

大野川は、その源を宮崎県西臼杵郡祖母山に発し、竹田盆地を貫流し、緒方川、奥岳川等を合わせて中流峡谷部を流下し、大分市戸次において大分平野に出て、さらに判田川等を合わせ、大分市大津留において乙津川を分派し、別府湾に注ぐ、幹川流路延長107km、流域面積1,465km2 の一級河川である。
その流域は、大分・熊本・宮崎の三県にまたがり、大分県中部における社会・経済・文化の基盤をなし、自然環境や景観が優れていることから、本水系の治水・利水・環境についての意義は極めて大きい。

流域の上中流部には、阿蘇熔結凝灰岩が広く分布し、表土は黒色の火山灰で覆われており、台地、丘陵、谷底平野が形成されている。また、下流部には、川筋に砂礫・粘土等の沖積層が分布し、右岸山地には変成岩、左岸丘陵地には砂礫層等が分布しており、比較的平坦な地形をした河岸段丘と沖積平野が形成されている。

大野川はうっそうと生い茂った深山の渓谷を抜け出ると、川幅も広くなり、火砕流台地に広がる山村の中を緩急を繰り返しながら流下し、下流域では広々とした穀倉地帯や市街部をゆったりと流れる自然豊かな環境を有している。火砕流台地の中を、滝等を形成しながら谷部を流下している上流部は、その河岸に樹木が発達し、滝裏の岩の狭間を巣とするカワガラス等が生息している。河床は奇岩と玉石等から成り、渓流を好むアマゴ等が生息している。なお、最上流部では渓谷の中に大小の滝が見られ、河岸には谷合に育つシオジ等が自生しており、それらの林床や渓流にオオダイガハラサンショウウオ等が生息している。
集落が点在する台地を屈曲しながら流れている中流部は、河岸に樹木が帯状に広く分布しており、河岸の崖を巣とするカワセミが生息している。河床は岩盤の上に玉石や砂礫が覆い、淵や瀬を好むオイカワや瀬を好むアユ等が生息し、水裏の砂礫地にはツルヨシ等が繁茂している。また、カヌーやアユ釣りに利用されている。
大分市市街地や工場群がある平野を貫流している下流部は、川が緩やかに蛇行し、河床は主に砂礫や砂利となり、高水敷や瀬・淵が形成され、感潮区間末端の瀬はアユの産卵場となっている。高水敷では所々に樹木が見られる他はほとんどが発達したオギの群落で占められ、オオヨシキリ等の生息の場となっている他、一部は採草地や都市部の貴重なオープンスペースとしてゴルフ場などに利用され、筏下り等の活動も盛んに行われている。
本川左岸から分派し、市街地を貫流している乙津川は、ほとんどが感潮区間であり、河床はシルト質土が多い。水辺から高水敷にかけて、ヨシ、オギ等が繁茂しており、高水敷の一部は、採草地や運動広場として利用されている。
なお、水質については、BOD75%値でみると、全川にわたって約1㎎/リットル程度と近年良好である。

大野川水系における治水事業については、昭和4年より国の直轄事業に着手し、犬飼における計画高水流量を5,000m3/secとし、戸次から河口までの区間について、ほぼ全川にわたる堤防の築造、河道の掘削及び浚渫を行い、水衝部には護岸・水制を設置した。
その後、昭和18年9月と昭和20年9月の洪水にかんがみ、昭和21年に犬飼における基本高水のピーク流量を7,500m3/secとし、このうち1,500m3/secを乙津川に分派する計画に変更し、築堤、掘削、護岸、水制、乙津川分流堰及び高潮対策を実施した。
さらに、昭和29年9月、昭和36年10月等の洪水及び著しい流域内の開発状況にかんがみ、昭和49年に基準地点を白滝橋とし、同地点における基本高水のピーク流量を11,000m3/sec、そのうち上流ダム群により1,500m3/secを調節して河道への配分流量を9,500m3/secとする計画を決定した。

河川水の利用については、農業用水として約15,000haに及ぶ耕地のかんがいに利用され、また、大正9年に建設された軸丸発電所を始めとする10箇所の水力発電所により総最大出力41,830kwの電力供給が行われ、さらに工業用水として大分臨海工業地帯等に、また、水道用水として大分市、竹田市等に供給が行われている。

(2)河川の総合的な保全と利用に関する基本方針

本水系における河川の総合的な保全と利用に関する基本方針としては、河川工事の現状、砂防・治山工事の実施及び水害発生の状況、河川の利用の現況(水産資源の保護及び漁業を含む。)、流域の文化並びに河川環境の保全を考慮し、また関連地域の社会経済情勢の発展に即応するよう、九州地方開発促進計画、環境基本計画等との調整を図り、かつ、土地改良事業等の関連工事及び既存の水利施設等の機能の維持に十分配慮し、水源から河口まで一貫した計画のもとに、段階的な整備を進めるに当たっての目標を明確にして、河川の総合的な保全と利用を図る。

災害の発生の防止又は軽減に関しては、沿川地域を洪水から防御するため、流域内の洪水調節施設により調節を行った上で、洪水を安全に流下させるとともに、台風による高潮や近年多発している内水被害に対処する。これらに当たって、地震防災にも配慮する。あわせて、整備途上段階における施設能力以上の洪水が発生した場合において、堤防強化を行う等できるだけ被害を軽減するよう努めるとともに、計画規模を上回る洪水に対しても被害を極力抑えるよう配慮する。さらに、洪水等の発生時の被害を最小限に抑えるため、関係機関とも連携して水防体制の維持、強化等を図り、平常時からハザードマップ等の災害関連情報の提供、洪水時における情報伝達体制及び警戒避難体制の整備、水防警報、洪水予報の強化、災害に強い地域づくりのため土地利用計画との調整、住まい方の工夫、越水しても被害を最小限にする対策等を関係機関や地域住民等と連携して推進する。なお、支川及び本川中上流区間については、本支川及び上下流間バランスを考慮し、水系として一貫した河川整備を行う。

河川水の利用に関しては、水の安定供給を確保するために、経済・社会情勢の変化等を勘案しながら、水資源の開発と広域的かつ合理的な利用の促進を図るとともに、流水の正常な機能を維持するため必要な流量を確保するよう努めるものとする。また、渇水時等における情報提供、情報伝達等の体制を整備し、渇水が発生した場合における影響の軽減に努めるものとする。

河川環境の整備と保全に関しては、自然環境や河川の利用状況等について、今後とも定期的に調査を実施し、豊かな川の流れに育まれてきた多様な動植物の生息・生育環境に配慮し、瀬・淵等の保全を行うとともに、これらの生息・生育環境に配慮しつつ、都市部における貴重なオープンスペースである高水敷や水辺における多様なニーズに対し、人と河川の豊かな触れ合いの場の整備と保全を行う。特に、変化に富んだ渓谷・雄大な滝及び都市部の緩やかで広々とした水面などの良好な景観や、天然アユの遡上・産卵にも見られるように、豊富かつ清らかな流れなど、大野川の有する良き環境を保全していく。

また、健全な水循環系の構築や良好な水質・水量の確保・保全を図るため、関係機関を始め、流域全体で一体となって取り組んでいく。

河川の維持管理に関しては、災害の発生の防止、河川の適正な利用、流水の正常な機能の維持及び河川環境の整備と保全の観点から適切に対策を行うものとする。特に、大野川では、水門・樋門等の河川管理施設の老朽化が見られることから、機能改善等を計画的に実施し、施設管理に当たって、操作の確実性を確保しつつ高度化、効率化を図るとともに、局所的な深掘れの進行が見られることから、水衝部の深掘等に対する河床維持を行う。さらに、河川区域内の樹木の伐採等に当たり、治水機能・環境機能を十分に考慮して、河川管理上に支障がないよう指導・管理するとともに、砂利採取については、河川環境、河床維持、賦存量等を踏まえて、総合的に対処するものとする。

また、河川に関する情報を流域住民に幅広く提供すること等により、河川と流域住民とのつながりや流域連携の促進及び支援、河川愛護思想の浸透並びに住民参加による河川管理を推進するものとする。

2. 河川整備の基本となるべき事項

(1)基本高水並びにその河道及び洪水調節施設への配分に関する事項

基本高水は、平成2年7月、平成5年9月洪水等の既往洪水について検討した結果、そのピーク流量を基準地点白滝橋において11,000m3/secとし、そのうち流域内の洪水調節施設により1,500m3/secを調節し、河道への配分流量を9,500m3/secとする。

基本高水のピーク流量等一覧表
河川名 基準地点 基本高水のピーク流量 洪水調節施設による調節量 河道への配分量
大野川 白滝橋 11,000m3/sec 1,500m3/sec 9,500m3/sec

(2)主要な地点における計画高水流量に関する事項

計画高水流量は、基準地点白滝橋において9,500m3/secとし、そのうち大津留地点において乙津川に1,500m3/secを分派し、鶴崎橋地点において8,000m3/secとし、その下流では河口まで同流量とする。

大野川計画高水流量図

(3)主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る川幅に関する事項

本水系の主要な地点における計画高水位及び計画横断形に係る概ねの川幅は、次表のとおりとする。

主要な地点における計画高水位及び川幅一覧表
河川名 地点名 河口からの距離(km) 計画高水位(T.P.m) 川幅(m)
大野川 白滝橋 14.8 15.49 300
大野川 鶴崎橋 2.8 5.95 370
乙津川 高田橋 6.0 7.18 210

T.P.:東京湾中等潮位

(4)主要な地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量に関する事項

白滝橋地点直上流における既得水利としては、工業用水として6.56m3/sec、水道用水として0.694m3/secの計7.25m3/sec、白滝橋地点から本川下流において農業用水として0.45m3/sec、工業用水として0.81m3/secの計1.26m3/secの合計約 8.5m3/secの許可水利がある。
これに対して白滝橋地点における過去35年間(昭和38年~平成9年)の平均渇水流量は約19.7m3/sec、平均低水流量は約28.5m3/secである。
白滝橋地点における流水の正常な機能を維持するため必要な流量については、利水の現況、動植物の保護・漁業等を考慮して、概ね17m3/secとする。ただし、白滝橋地点流量には白滝橋地点直上流において取水されている工業用水及び水道用水の7.25m3/secを含む。
なお、白滝橋地点直上流及び下流の本川の水利使用の変更に伴い、当該水量は増減するものである。

(参考図)大野川水系図

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