城原川は急峻な山地と干拓等で形成された広大な佐賀平野を流れる河川であり、上流で降った雨は短時間で一気に神埼市街まで到達する。城原川が流れる佐賀平野は日本一の干満差を持つ有明海に面し、満潮時には海面より低くなる低平地であり、洪水被害と内水被害が生じやすい地形となっている。
また、城原川の中流域は天井河川となっていることから、中小河川の氾濫水は、城原川などの河川に流れ込むことができず、ひとたび氾濫すると甚大な被害が発生する恐れがある。
図ー1 城原川の地形特性
城原川の上流部は、山間部を流れる区間が1/20~1/60程度と急勾配であり、長崎自動車道付近より下流は1/500程度と上流に比べると緩やかになってくる。
また、歴史的な治水施設である野越しといわれる堤防の一部が低い箇所が存在している。野越しは、成富兵庫茂安が下流の町を水害から守るためなどに築いた施設といわれており、洪水が一気に下流に流れないよう上流の堤防の一部を低くして川の外に水をあふれさせるようにしたものである。現在もJR長崎本線より上流に9箇所残っている。
なお、これらの野越しにはあふれた水の勢いを弱め、広がっていかないよう水害防備林や受堤が設けられていたが、受堤等の一部が撤去されたことや、野越しの周辺での宅地化が進行しているため、野越しからあふれる洪水による周辺家屋への浸水被害が懸念される。
図ー2 野越しと受堤の位置
写真ー1 現状の野越しと受堤等
写真ー2 野越し周辺の開発状況
城原川の中流部は、天井川河川であることから氾濫した水は再び河川に戻ることのない、拡散型の氾濫地形を有しているため、洪水被害が広範囲に及ぶ恐れがある。河床勾配は平野部を流れるお茶屋堰付近までが1/1200程度と緩やかな区間となっている。
また、城原川での代表的な原風景となっている草堰といわれる、棒杭に柳、竹、芝、雑草などの粗朶や藁などをからませた農業用水を取水するために古来より続けられている堰が、13箇所存在する。草堰は、隙間が多く、わざわざ水が漏れやすい構造にすることで上流と下流で水を利用する人々の利害の調整を行っていたとされている。
※天井(てんじょう)川とは:川底が、周辺の地面の高さよりも高い位置にある川のことを天井川といいます。このような川では、川より地盤が低い堤内地に洪水が流れ込むと、川に水を戻しにくいため、被害が大きくなります。
図ー3 城原川縦断図
写真ー3 天井川の特徴(城原川)
城原川下流域は、低平地が広がっており拡散型の氾濫地形を成しているため、河床勾配はお茶屋堰付近から下流においては1/2000程度と緩やかになっている。また、城原川下流部は有明海による干満の影響を受ける感潮区間となっており、河床掘削してもガタ土の堆積で河道が狭まるため、河道の維持管理が必要となる。
写真ー4 有明海から見た筑後川河口域 |
写真ー5 城原川下流部におけるガタ土の堆積状況 |