観光振興と道路 シンポジウム

- 九州におけるシーニックバイウェイの可能性を探る -

魅力あるわき道=寄り道=観光道路 シーニックバイウェイ

新しい観光振興策「シーニックバイウェイ」が注目を集めている。シーニックは「景色」、バイウェイは「わき道、寄り道」を意味する。発祥はアメリカ。行政、住民、利用者、NPOなどが一体となって、地域の沿道景観や自然環境の保全・整備に取り組み、歩行者やマイカーの旅行者を呼び込む。道路そのものを観光資源として活用するという新しい視点だ。日本では北海道が先行。豊富な観光資源が点在する九州にも、導入の必要性や可能性はないだろうか。9月17日に福岡市で開かれた「“観光振興と道路”シンポジウム─九州におけるシーニックバイウェイの可能性を探る─」は、九州の道路・観光行政担当者や地域づくりのリーダーらが出席。さまざまな角度から意見を交換し、新しい道づくりの機運が一気に高まった。

2004年9月17日(金)

13:00 【開会】
【問題提起】「九州の観光と道路」 岡本 博氏
(九州地方整備局道路部長)
13:50 【基調講演】「シーニックバイウェイと地域の元気」 石田 東生氏
(筑波大学社会工学系教授)
15:00 【パネルディスカッション】「九州の観光振興と道路」
3:50 基調講演(石田 筑波大教授) (60min)
17:00 【会場討議】
■主催/
国土交通省九州地方整備局、 道守九州会議
■後援/
福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、福岡市、北九州市、西日本新聞社、佐賀新聞社、長崎新聞社、熊本日日新聞社、大分合同新聞社、宮崎日日新聞社、南日本新聞社

"観光振興と道路" シンポジウム

【問題提起】

~魅力の創出を地域・行政の恊働で、道守活動に期待~

「九州の観光と道路」
岡本 博氏 (国土交通省九州地方整備局部長)

岡本 博氏 (国土交通省九州地方整備局部長)

 観光振興に道路をいかに役立てるかという観点から現在行っている道路施策を3点にわたって述べてみたい。
 まず、観光資源へのアクセス改善だ。宮崎県綾町では、1995年の九州縦貫道人吉~えびの間開通と、酒泉の杜、綾城などの観光施設整備が相まって、観光入り込み数が年間40万人から110万人に増えた。また、大分県宇目町では使い勝手の悪い国道326号が悩みだったが、「唄げんか大橋」の開通や「道の駅」開業などで、92年に数千人だった入り込み客数が、現在は6万人を超えるまでになった。
 次に、情報提供の充実が挙げられる。この点では「走りやすさマップ」の提供を予定している。これまでの地図は道路種別による色分けがなされていたが、これを走りやすいかどうかで色分けするものだ。これにより経路選択の幅が広がり、楽しい旅に寄与できると思う。また、分かりやすい標識や路面表示にも力を入れている。さらに、景観の優れた場所を撮影スポットに選定して、そのそばに駐車場を整備する「フォトスポット&パーキング」も進め、地図上やホームページでの情報提供を行っていきたい。
 三番目に観光資源の創出がある。「道の駅」の利用者は九州・沖縄で2002年度で2680万人に達した。大分県日田市豆田地区では平成12年度に電線地中化を行い、美しい街並み創出に大きく寄与している。シーニックバイウェイとの関連でいえば、やまなみハイウェイや日南海岸・堀切峠を含む国道220号などは道路そのものが観光資源ととらえられてきたが、より魅力的にするにはどうしたらいいかが求められている。
 シーニックバイウェイの実践は魅力の創出だけでなく、その維持も重要で、地域と行政の協働が求められる。九州内で2万人近くの会員に達している道守会議の活動は、その重要なパートナーとなり得ると考えている。

【基調講演】

~活力ある地域の創造 北海道に「やる気」「できる気」~

「シーニックバイウェイと地域の元気」
石田 東生氏  筑波大学社会工学系教授(工学博士)

いしだ・はるお  1951年大阪府生まれ。
東京大学工学部土木工学科卒業、同大学院工学系研究科修士課程修了。フィリピン大学客員教授、筑波大学工学系助教授を経て、95年より現職。専門は都市交通計画、交通行動分析。「計画論(土木工学大系)」などの著書がある。

石田 東生氏  筑波大学社会工学系教授(工学博士)

 シーニックバイウェイは、米国で12年前にスタート。経済効果に加え、地域の人々が自らの地域や道路などの整備に愛着や誇りをもって取り組むという成果を上げ、日本では「北海道におけるシーニックバイウェイ制度導入モデル検討委員会」が昨年2月に設置され試行が始まった。
 「全米シーニックバイウェイプログラム」は、シーニック(景観)だけでなく、歴史・自然・文化・レクレーション・考古学の六視点からバイウェイ(脇道)を含む領域(コリドー)を連邦政府、州、自治体が地域の申請に基づいて指定し、優れた景観などの資源や物語を住民が主体になって長期的に維持・充実し、観光客にもゆったり楽しんでもらう趣旨だ。行政の各種補助があるが、行政は黒子。主体は地域。いい関係が成立している。ホームページなど情報発信が充実し、表彰制度もある。
 一号指定のブルーリッジパークウェイ(全長約750km)は、景観を生かすために石組みのトンネルや木製ガードレールなど天然素材を徹底して使い、屋外広告はほとんど見られない。小さな道にも地域のストーリーを伝える案内板が生まれている。地域のカークラブや工芸組合、NPO、NGOなどがかかわる。地域の努力により年間平均約2千万人の旅行者がこの道路を行き来し、約2640億円の経済効果を上げている。
 北海道らしい景色とドライブを楽しみたいと道外客のレンタカー利用が増えている。九州も共通だろうが、道や周遊が大切。そこで米国のシーニックバイウェイに倣い、美しいツーリング環境・個性的な地域環境・美しく誇りと活力ある地域の創造を目標に「千歳~ニセコ」「旭川~占冠」両モデルルートを選定。地域住民・組織による運営、ブランド確立を目指す地域ビジネスの創造、情報ネットワークや支援センターによるサポートを推進している。
 バイウェイとカーナビを結ぼう、馬の通る道も、などとアイデアが出て、地域ビジネスの芽も生まれている。何より実行力が備わってきた。行政指導では難航する看板などの撤去が住民の要請だとすんなり実現し、景観を乱す離農畑にカラシ菜を住民が再植栽、行政は車外風景が楽しめるよう道路標識を移動した例もある。
 成果を一言で言えば、住民や行政の「やる気」に「できる気」が加わったこと。地域と行政、市民団体間の横のつながりができたこと。
 道普請は普(あまね)く請(こ)うことであり「協働」、祭りのワッショイは「和を背負う」が語源。九州は豊かな自然に加え、歴史遺産、さらに道守九州会議も組織されている。私の提案はワッショイ、みんなで楽しくやりましょう。

シンポ参加者の人気候補ルートは

(1)やまなみハイウェイ (2)阿蘇 (3)日南海岸

効果への期待は9割以上

【参加者アンケート】

 「観光振興と道路」シンポジウムには九州各地から約400人が参加した。このうち145人がアンケート調査に回答を寄せた。
 「今後どんな施策が効果的か」との質問のうちシーニックバイウェイに対しては40.0% が「大変効果的」、54.5% が「効果的」と回答した。
 「シーニックバイウェイの候補地・ルート」の回答は(1)やまなみハイウェイ34人 (2)阿蘇13人 (3)日南海岸10人 (4)天草 (4)国道57号 (4)同10号が各8人 (7)国道202号7人などの順だった。

::: 結果概要 :::

グラフはクリックで拡大できます

結果概要 グラフ

※参加者数357名を対象にアンケート調査を実施し、この内の145名の方からの回答。

■観光振興に向けて、今後どの施策の視点が効果的であると考えられますか。

結果概要 グラフ

■あなたが九州で「シーニックバイウェイ」にふさわしいと考える場所(路線名等)をお聞かせ下さい。

結果概要 グラフ

■優れた景観を創造・保全するために規制をかけることについてあなたの意見をお聞かせ下さい。またその理由もお聞かせください。

結果概要 グラフ

■その他ご提案・ご意見等がありましたらお聞かせ下さい。

  • ◎観光地までの標識、路面表示などの統一的なものを検討してもらいたい。(男性40代公務員)
  • ◎観光は、観光地の持つポテンシャルが最重要と考えますが、利用者にこそこの情報を与える広報や案内・誘導を行うシステムで補間していくことも必要と感じます。(男性30代会社員)
  • ◎新しく作る物と今あるものを活かす視点が重要だと感じました。(男性40代公務員)

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