松林の持つ機能・効果
飛砂防止や防風・潮風害防止の役割
砂の移動抑制、樹高の20~30倍の距離に防風効果、塩害防備などの効果があります。
多様な生き物を育む環境の形成・環境教育の場の提供・景観向上の役割
白い砂と青々とした松により形成される、白砂青松の風景を形成します。
海の中道におけるクロマツ林の位置づけ
全国の松原の分布からみて、玄界灘沿岸には特に多くクロマツ林が分布しています。
海の中道におけるクロマツ林の歴史
海の中道は、砂州からなる土地、玄界灘側からの強い潮風と、厳しい環境下にありながら、古くから景観のすばらしさを認識され、松林を植え、守り育てられてきています。
筑前国風土記逸文 (古風土記、奈良時代)
打ち上げ浜の西方三十町ばかり、松を植ゆれども打ちあぐる浪 吹寄する砂に埋もれて生立せず今尚不毛の地なり この地に亀ヶ池 亀栖池あり これ志賀大神亀を放ちたまひし所という
筑前國続風土記 (貝原益軒、1703年献上)
【奈多濱】
奈多の民家有所より志賀島迄、東西三里、北は大洋、南は入海にて、其間は白沙の洲也。
(略)其西吹上の崎と云所、神宮皇后の神楽を奏し給ふと云傳ふ。是迄奈多の境内にて、奈多の松原續けり。
奈多の白濱は、誠に希世の境地也。村人は此所を海の中道と云。
(略)然れ共奈多の白濱の景色は凡あだし國にも、又類すくなき絶景にて、さばかり名有所といへ共、此氣色には及びがたし。
筑前国続風土記付録 (加藤一純、鷹取周成、1798年ごろ)
此所、明暦、萬治の頃までは、白浜なりしを、萬治三年(1660年)加藤弥左衛門成昌、官に請ひ、松林となせり。
クロマツ林を保全するための課題
海岸林が役割を果たせるようにクロマツ林を保全するには、様々な課題があります。
マツクイムシによる松枯れ被害対策
枯損木伐採本数(公園区域全体)
- ◎松枯れ被害対策は、近隣エリアと一帯となった取り組みが必要。
- ◎継続的な取り組みが地域の被害軽減には重要となる。
松枯れのメカニズム
松枯れ被害対策の実施
予防
【樹幹注入】
健康なクロマツに前もって薬剤を注入し、線虫の侵入を防ぐほか、侵入してきた線虫を殺したり、線虫の増殖を防ぐ方法です。
【予防散布(薬剤散布)】
予防散布は、羽化したマツノマダラカミキリの成虫を薬剤で殺虫し、健全木に対する線虫の感染を予防する方法です。羽化する季節に確実にクロマツの梢に薬剤が付着していることが大切となります。
駆除
【伐倒駆除(枯損木の処理)】
伐倒駆除は、被害にあった枯損木をその場から搬出し、被害の拡散を防ぐ方法です。
伐倒した枯損木は、細かく破砕することで、木の中にいるマツノマダラカミキリの幼虫とさなぎを殺し、拡散を防ぎます。
クロマツ林の過密化対策
クロマツは、強い日光が必要な陽樹です。特に最下段の枝は“力枝”と呼ばれ重要な働きがありますが、過密化により下枝が枯れてしまうと、クロマツは細く弱々しく育つか、枯れてしまいます。海岸林に期待される防風、防潮、防砂の機能を果たすことが出来るクロマツを育てるには、密度管理(本数調整)が必要となります。
過密化対策の実施
海の中道海浜公園では、クロマツ林ごとに目標とする林種に分類し、それぞれの密度管理の指標を整理。この指標に基づき、密度管理として間伐を実施。
【樹高-密度(H-N)曲線】
【成長段階ごとの密度管理(防風・防砂・防潮林)】