佐賀市大和町の嘉瀬川と多布施川の分流点にある「石井樋」は、治水の神様といわれた成富兵庫茂安によって約400年前につくられた水路です。佐賀の城下町や農地をひらくために必要な飲料水やかんがい用水を供給するとともに、流域の水害を防ぐはたらきも持っていました。一時使われなくなり、土砂に埋没していましたが、平成17年に石井樋地区歴史的水辺整備事業により復元されました。
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石井樋は、当時の土木技術の粋と英知を注ぎ込んだ構造物です。現代でも通用するすばらしい工夫をご紹介します。
石井樋付近の堤防は二重になっていて、その間に遊水地をつくっています。1番目の堤防をあふれた水が2番目の堤防にたどりつくまでに勢いが弱くなるしかけです。洪水の被害が大きくならないよう工夫したものです。
また、川側に竹を植えて、水の勢いを弱めたり、大きな石や流木などを人が住んでいる土地まで流さないようにしたりしていました。
嘉瀬川の水には砂が多く含まれています。そこで、
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砂がまざった嘉瀬川の水は象の鼻で流れが川の中央に寄り、大井手堰にぶつかります。そのとき水に含まれた土砂の一部が川底に沈みます。 |
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大井手堰にぶつかった水は逆流してゆるやかな流れになり、土砂を少しずつ川底に沈めながら象の鼻と天狗の鼻の方へ流れていきます。 |
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象の鼻と天狗の鼻の間を通るうちに、さらに流れはゆるやかになり、土砂の混じらないきれいな水が石井樋から多布施川に流れていきます。 |
石井樋は、昭和35年に上流に川上頭首工という取水施設がつくられるまで、約350年にわたり水不足や水害から佐賀平野を守り続けてきました。日本でも最も古い利水施設のひとつで、歴史的・文化的な価値が高い土木遺産です。
新しい大井手堰の横に、壊れないよう埋め戻して保存しています。
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発掘前はコンクリートの堰になっていました。 |
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コンクリートを除くと、古い石積みが出てきました。 |
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壊れないよう埋め戻しています。 |
発掘されたままの状態で保存されています。天井には「仏像」が彫られています。
表面をおおっていたコンクリートをはずしました。
入口の石積みを参考にして石を積みました。
当時の石積みを守るために、上からささらに新しい石を積んで保存しています。
土をのぞくと古い石積みが出てきました。
古い石積みを守るため、上から新しい石を積みました。
残っていた石積みは忠実に積み直しを行いました。
古い石積みは石がはずれたり、乾いたりしていました。
はずれている石をもどしたり、積み直したりしました。
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滋賀県の大津市坂本近くにある穴太の石工集団が積んだ石垣のこと。織田信長の安土城築城で全国に広まりました。1600年代に作られた唐津市の名護屋城も穴太衆の技術が使われています。基本的には穴太積みとは、自然石を積み上げた野面積みのこと。 |
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湿地など地盤の弱いところに石積みを行うと石の重みで部分的に沈下が起きます。この沈下を抑えるために設置されたはしご状の土台。佐賀城築城でも使われ、水の中でも腐りにくい松の木が多く使用されています。 |
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川底の砂の吸出による石積み等の崩壊を防ぐため、明治初期にオランダから伝わった伝統的な河川技術。石井樋では大井手堰石積み(護床工)安定のために、現代技術の吸出防止材と併用し最下流部に設置しました。 |
元号 | 西暦 | 事情 | 情報元 | 出典 |
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永禄3年 | 1560 | 佐賀郡益田(現在の佐賀市鍋島町増田)に生まれる。 | ||
1570 | 龍造寺氏に仕える。 | |||
1576 | 藤津攻めに先鋒として参加、戦功を立てる。 | |||
1580 | 鍋島氏に仕える。 | |||
天正10年 | 1582 | 鍋島直茂の使いとして、大阪城で豊臣秀吉に南蛮帽子を献上。 | 宮地米蔵先生 | |
1587 | 豊臣秀吉の九州平定に参加。 | |||
天正9年 | 1591 | 龍造寺家晴(諌早家の祖)と成富兵庫茂安、大阪での豊臣秀吉の朝鮮遠征会議の帰途、太宰府天満宮に参拝したさいに李宋歓と出会う。 | 唐人町 ホームページ |
御用唐人町荒物唐物屋職御由緒書 |
この年の後半より名護屋城築城が始まる。 諸大名の割普請により数ヶ月で完成したと伝えられる。 |
佐賀県立名護屋城博物館 | |||
1592 | 文禄の役に参加。 | |||
江戸城普請、大阪城普請(徳川家)に参加 | ||||
元和年間 | 1615 ~ 1623? |
石井樋をつくる | ||
元和年間? |
蛤水道 |
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元和年間 ~ 寛永年間? |
千栗土居 |
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年代不詳 | 馬ン頭・萩尾堰 | 古文書 1 (米田氏所蔵) |
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古文書 2 (米田氏所蔵) |
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年代不詳 | 三千石堰 |
石井樋呑口の遠景 |
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石井樋呑口のアップ |
「天狗の鼻」補強状況 |