城原川流域では、昭和28年6月洪水において甚大な被害が発生し、特に近年では、平成21年7月・平成22年7月・令和5年7月は計画高水位(h=4.51m)を上回り、野越し※から越流する洪水が発生した。
※野越し(のこし)とは:江戸時代に成富兵庫茂安によって築造された治水工法の一つで、堤防の一部を低くし、そこから川の水を溢れさせることで、下流へ流れる水の量を軽減し、氾濫を防ぐという施設です。現在は、周辺の宅地化や圃場整備により、受堤等の一部が撤去されたことから、野越しからあふれる洪水により周辺家屋への浸水被害が懸念されている。
表 過去の主な洪水被害実績
洪水年月日 | 異常気象名 (生起要因) |
被害状況 | 洪水の概要 | ||
---|---|---|---|---|---|
床上浸水 (戸) |
床下浸水 (戸) |
農地被害 (ha) |
|||
S24.8.16 〜8.18 |
台風 | 9,121 | 14,273 | 11,354 | 雨は小城を中心として佐賀県全域に降った(災異誌) |
S28.6.25 〜6.28 |
梅雨前線 | 14,597 | 14,920 | 13,318 | 古湯、三瀬等の山間部では900mm、平地部では500mm〜600mmの雨 が降った(災異誌) |
S47.6.6 〜7.23 |
断続した豪雨並びに 台風6、7号及び台風9号 |
54 | 2,088 | 1,375 | 脊振山系及び筑後川下流域で大雨が降ったため、脊振山系に水源を持つ河 川では水位の上昇が著しかった(国交省資料) |
S57.7.5 〜8.3 |
豪雨及び、台風10号 | 2 | 71 | 291 | 脊振山系に雨が多く、短時間に集中して降った(国交省資料) |
S60.5.27 〜7.24 |
豪雨及び、台風6号 | 0 | 13 | 654 | 梅雨前線の停滞により断続的に強い雨が降った(国交省資料) |
H2.6.2 〜7.22 |
豪雨(梅雨) | 1 | 362 | 5,430 | 佐賀南部で雨が多く、水位の上昇が激しかった(国交省資料) |
H21.7.26 | 梅雨前線 (中国・九州北部豪雨) |
0 | 36 | 946 | 7.24〜26(3日間)の総降雨量は、500mm超、日出来橋観測所では、計 画高水位を超過し、野越し5箇所から越流した(国交省資料) |
H22.7.10 〜7.15 |
梅雨前線 | 0 | 3 | 237 | 神埼市伊福観測所で総降雨量約700mm、日出来橋観測所では、計画高水 位を超過し、野越し4箇所から越流した(国交省資料) |
R3.8.11 〜8.15 |
豪雨 | 6 | 45 | 1,003 | 神埼市伊福観測所で総降雨量約1,010mm、日出来橋観測所では、はん濫 危険水位を超過した(国交省資料) |
R5.7.7 〜7.10 |
梅雨前線 | 3 | 51 | 不明 |
神埼市伊福観測所で総降雨量約590mm、日出来橋観測所では、計画高水 |
(出典)
※浸水被害状況については、城原川周辺の河川による被害も含んでいるものとなっています。
写真ー1 昭和28年6月洪水(神埼橋下流) 佐賀県神埼郡城原川沿岸の民家流出 |
写真ー2 昭和57年7月洪水 神埼市(旧千代田町)の浸水状況 |
写真ー3 平成21年7月洪水 3号野越しからの越水状況 |
写真ー4 令和3年8月洪水 9号野越し地点の状況 |
城原川では、戦後間もない昭和28年6月に未曾有の大水害が発生した。この水害は筑後川流域で有史以来最大の水害であり、「佐賀県災異誌」によると佐賀市、佐賀郡、神埼郡を合わせた被害は床下浸水14,920戸、床上浸水14,597戸とされている。
浸水実績図(昭和28年6月洪水)
写真ー1 城原川堤防決壊 (S28.6出水) |
写真ー2 城原川堤防決壊 (S28.6出水) |
日出来橋地点(平常時) |
日出来橋地点(最高水位5.54m)【7/10 6時20分時点】 |