水利用の歴史等

農業用水

城原川を含む佐賀平野は、奥行きの狭い脊振山を源としているため水源に乏しいとともに、干拓により海岸線の南下し農地が拡大したことから、深刻な農業用水の不足が生じた。

このため、山裾付近には上流からの雨水を貯めるため池などが数多く造られた。また、平野部では草堰などによって取水した川の水や雨水を一時貯めるなどして、クリークが網の目のように造られ、貴重な水が反復して利用された。一方、海岸線近くでは、潮が満ちた時に海水によって押し上げられた川の表面水を取水するアオ(淡水)取水が行われた。

①取水の歴史

城原川は、その地形的な特徴から河川水だけでは水が賄えなかったため、山麓ではため池、平野部ではクリークやアオ取水など、限られた資源を有効に活用する工夫がなされてきた。

取水の歴史を表した図

②城原川の取水施設

城原川は、①の様な取水利用形態から、22堰を利用して上流から下流に点在する取水樋管35ヵ所より取水され利用されている。(35樋管のうち、中下流域の24樋管は慣行水利権、それ以外は届出なし)

城原川の取水施設の場所をまとめた図

③クリーク貯留・反復利用システム

佐賀平野では広範囲の水田地帯の水を確保するため用水・貯留・排水を兼ねたクリークが発達している。

 

発電用水

城原川の発電用水については、明治41年に竣工した広滝第一発電所、昭和6年に竣工した広滝第二発電所において利用されている。これら水力発電所の総最大取水量は約3.75m3/s、総最大出力は約3,150kWとなっている。

広滝第一発電所の写真

写真ー1 広滝第一発電所

広滝第二発電所

写真ー2 広滝第二発電所

 

過去の渇水被害

佐賀東部地区(城原川流域含む)の水道企業団である佐賀東部水道企業団において、一部通水開始の昭和60年2月以降平成6年、平成7年、平成14年、平成22年、平成23年に取水制限が行われた。

特に平成6年の佐賀地域は7月7日~7月24日までの18日間、全く雨が降らず、統計開始(1968年)以来最も長い無降水連続日数を記録した。7月の月降水量は佐賀で24.5mmと7月の月降水量の最も少ない記録(過去の最小記録1914年7月の29.7mm)となった。年間降水量は、佐賀市で平均値1,836.4mmに対して55%の1,013.5mmと平年より約800mmも少なく、過去最小の昭和53年の1,065.5mmを下回り、明治23年の観測開始以来、最も少ない記録となった。このため城原川流域をはじめ、佐賀東部地区において12時間断水等を余儀なくされ、市民生活、社会経済活動に大きな影響を及ぼした。

また、平成6年以降も渇水の発生に伴う取水制限等が実施されており、平成14年の渇水では取水制限等の期間が213日間も継続した。なお、平成6年の城原川日出来橋地点における河川流量0m3/sの継続日数は13日間(8月12日~8月23日)を記録し、神埼市(旧神埼町、旧千代田町)における農作物等への大きな被害が発生した。

 

表-1 佐賀県における近年の渇水状況

区別 取水制限等期間 備考
期間 日数 対応内容
平成6年 水道 7/7〜H7/5/31 329日間 12時間断水
取水制限
減圧給水
佐賀東部水道企業団(15〜40%)
平成7年 水道 12/22〜H8/4/30 129日間 自主取水制限 佐賀東部水道企業団
平成14年 水道 9/30〜H15/4/30 213日間 取水制限
減圧給水
自主的取水制限
佐賀東部水道企業団(20〜22%)
平成22年 水道 12/24〜H23/1/31 39日間 自主的取水制限 佐賀東部水道企業団
平成23年 水道 4/21〜5/30 40日間 自主的取水制限 佐賀東部水道企業団

※佐賀東部水道企業団への聞き取り。

平成6年渇水時状況写真1(新村橋より上流を望む)

写真ー3 渇水時状況写真

平成6年渇水時状況写真2(お茶屋堰)

写真ー4 渇水時状況写真

平成6年渇水時状況写真3(日照りが続き干上がった水田)

写真ー5 渇水時状況写真

 

利水の課題と取組

城原川の農業用水に関しては、上流部の樋管で取水された水が、幹線農業用水路へ流れ込み、下流部でも農業用水の利用は可能な水利構造となっている。

しかし、圃場整備の実施に伴い水路系統の再編や管理水位の低下、作付け作物の変化等により水利用の形態が変化したことで、下流地区では自流が少ない冬場などにおいて集落内水路の水が少なくなってきたとの声がある。

下流地区の集落内水路における自流が少ない冬場など、水不足の声があるものの、関係行政機関からなる「城原川の整備と水利用に関する検討会(以下「検討会」という)」において、城原川の水は沿川の取水施設の改善や水路の再編等による水利用の合理化を図ることで城原川の水に不足は生じないことが確認された。

現在、この検討会の結果を踏まえ、関係行政機関からなる「城原川利水調整協議会」において、取水実態、利用状況の把握とともに水利用の合理化に向けた取組が利水者を含めた関係者との間で継続的に行われている。

取水実態調査の状況写真1

取水実態調査の状況写真2

取水実態調査の状況写真3

写真ー6 取水実態調査の状況

 

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