水質用語
河川水の汚濁
し尿や厨房排水に代表される有機物による汚濁が水質汚濁の基本的なものである。
有機物は微生物の働きにより分解されて無機化、ガス化されるが、その過程で水中の溶存酸素が消費される。
溶存酸素は空気や水中植物の光合成によって供給されるが、有機物の量が多いと供給が間に合わず、溶存酸素が欠乏し、魚をはじめ水生生物が棲めなくなる。
この状態が進むと、ドブ川の状態になる。
DO(溶存酸素)
- 水に溶けている酸素のこと。河川での浄化作用や魚などの水生生物の生息に不可欠な要素である。
- 7mg/l以上: サケ・マスなどの孵化条件
- 5mg/l以上: 河川水が良好な状態を保つのに望ましい量
- 3mg/l以上: 魚介類が生息するのに必要
- 2mg/l以上: 好気性微生物が活動するのに必要な量
- 〃 以下: 有機物の嫌気性分解によりメタンガスなどが発生
(20℃の飽和DO量は8.84mg/l)
BOD(生物化学的酸素要求量)
水中の汚濁物質(有機物)が微生物により酸化分解され、無機化、ガス化するときに必要とされる酸素量。
環境基準では河川の汚濁指標として採用されている。
通常は20℃の暗所で5日間培養したときの酸素消費量(BOD5)で表す。
COD(化学的酸素要求量)
水中の汚濁物質(主として微生物)を酸化剤で化学的に酸化するときに消費される酸素量。
環境基準では海域及び湖沼の閉鎖性水域の汚濁指標として採用されている。
BODとCODの使い分け
河川では汚濁物質は流下し、海域や湖沼では滞留するという特性があり、河川では流下する間に微生物が分解可能な有機物を対象に、閉鎖性水域では分解作用が長時間にわたるため全有機物を対象にして有機汚濁を考えている。
75%値
BOD及びCODの環境基準の満足状況は公共用水域が通常の状態(河川にあっては低水流量以上流量)にあるときの測定値によって判断することになっているが、低水流量の把握は非常に困難であるため、測定された年間データのうち75%以上のデータが基準値を満足することをもって環境基準に適合しているとみなすことになっている。
すなわち、1年間に測定された日平均値の全データを小さいものから順に並べ、0.75 × N番目(Nはデータ数)のデータ値を環境基準値と比較して、適合、不適合の判断をする。
pH(ピーエッチまたはペーハー:水素イオン濃度指数)
水の酸性、アルカリ性の度合いを示す指数(1~14)で、単位はない。
淡水は7前後、海水は弱アルカリで8前後。
- 7以下: 酸性
- 7以上: アルカリ性
- 7 : 中性
SS(浮遊物質または懸濁物質)
水中に懸濁している不溶解性の粒子状物質のことで、粘土鉱物に由来する微粒子や、動植物プランクトン及びその死骸、下水・工場排水などに由来する有機物や金属の沈殿などが含まれる。
大腸菌群数
大腸菌及び大腸菌によく似た性状の菌の総称で、土の中などにも見られるが、一般的には人や動物の排泄物に多く存在するので、ふん便等による水質汚濁の程度を表す指標として用いられる。
総窒素
窒素化合物には有機態窒素、アンモニア窒素、亜硝酸態窒素、硝酸態窒素等がありこれらを全て合わせたものを総窒素という。
水中に窒素化合物が多く含まれているとプランクトンの異常増殖の要因となり赤潮等が発生する場合が多い。
総リン
リン化合物にもリン酸態リンや有機態リン等があり、これらを合わせたものを総リンという。
リン化合物も窒素化合物と同様にプランクトンの異常増殖をもたらす物質の一つであり、赤潮等の主な要因と考えられている。
クロロフィルa
クロロフィル(葉緑素)は、クロロフィルa、b、c及びバクテリオクロロフィルに分類されるが、このうちクロロフィルaは光合成細菌を除くすべての緑色植物に含まれるもので、藻類の存在量の指標となる。
流量用語
豊水・平水・低水・渇水(流況)は、一年を通じての日流量を大きい方から小さい順に並び替えて算出し、それぞれ次のように示している。
豊水流量
1年を通じて95日はこれを下らない流量を言う。
平水流量
1年を通じて185日はこれを下らない流量を言う。
低水流量
1年を通じて275日はこれを下らない流量を言う。
渇水流量
1年を通じて355日はこれを下らない流量を言う。
水質汚濁に係る環境基準(平成5年3月8日環境庁告示第16号)
1.生活環境の保全に関する環境基準
①河川(湖沼を除く)
類型 | 利用目的の適応性 | 基準値 水素イオン 濃度(pH) |
基準値 生物化学的酸素 要求量(BOD) |
基準値 浮遊物質量 (SS) |
基準値 溶存酸素量 (DO) |
基準値 大腸菌群数 |
該当水域 |
AA | 水道1級自然環境保全及び A以下の欄に揚げるもの |
6.5以上 8.5以下 |
1mg/l 以下 |
25mg/l 以下 |
7.5mg/l 以上 |
50MPN/ 100mg以下 |
水域類型ごとに指定する水域 |
A | 水道2級水産1級水浴及び B以下の欄に揚げるもの |
6.5以上 8.5以下 |
2mg/l 以下 |
25mg/l 以下 |
7.5mg/l 以上 |
1,000MPN/ 100mg以下 |
水域類型ごとに指定する水域 |
B | 水道3級水産2級及び C以下の欄に揚げるもの |
6.5以上 8.5以下 |
3mg/l 以下 |
25mg/l 以下 |
5mg/l 以上 |
5,000MPN/ 100mg以下 |
水域類型ごとに指定する水域 |
C | 水産3級工業用水1級及び D以下の欄に揚げるもの |
6.5以上 8.5以下 |
5mg/l 以下 |
50mg/l 以下 |
5mg/l 以上 |
- | 水域類型ごとに指定する水域 |
D | 工業用水2級農業用水及び Eの欄に揚げるもの |
6.0以上 8.5以下 |
8mg/l 以下 |
100mg/l 以下 |
2mg/l 以上 |
- | 水域類型ごとに指定する水域 |
E | 工業用水3級環境保全 | 6.0以上 8.5以下 |
10mg/l 以下 |
ごみ等の浮遊が 認められないこと |
2mg/l 以上 |
- | 水域類型ごとに指定する水域 |
②湖沼(天然湖沼及び貯水量1,000立方メートル以上の人工湖)
類型 | 利用目的の適応性 | 基準値 水素イオン 濃度(pH) |
基準値 生物化学的酸素 要求量(BOD) |
基準値 浮遊物質量 (SS) |
基準値 溶存酸素量 (DO) |
基準値 大腸菌群数 |
該当水域 |
AA | 水道1級自然環境保全及び A以下の欄に揚げるもの |
6.5以上 8.5以下 |
1mg/l 以下 |
1mg/l 以下 |
7.5mg/l 以上 |
50MPN/ 100mg以下 |
水域類型ごとに指定する水域 |
A | 水道2・3級水産2級水浴及び B以下の欄に揚げるもの |
6.5以上 8.5以下 |
3mg/l 以下 |
5mg/l 以下 |
7.5mg/l 以上 |
1,000MPN/ 100mg以下 |
水域類型ごとに指定する水域 |
B | 水産3級工業用水1級及び Cの欄に揚げるもの |
6.5以上 8.5以下 |
5mg/l 以下 |
15mg/l 以下 |
5mg/l 以上 |
- | 水域類型ごとに指定する水域 |
C | 工業用水2級環境保全 | 6.0以上 8.5以下 |
8mg/l 以下 |
ごみ等の浮遊が 認められないこと |
2mg/l 以上 |
- | 水域類型ごとに指定する水域 |
2.湖沼の窒素及び燐に係る環境基準
類型 | 利用目的の適応性 | 基準値 生物化学的酸素 要求量(BOD) |
基準値 浮遊物質量 (SS) |
該当水域 |
I | 自然環境保全及びII以下の欄に揚げるもの | 0.1mg/l 以下 |
0.005mg/l 以下 |
水域類型ごとに指定する水域 |
II | 水道1,2,3級(特殊なものを除く)水産1種水浴及び III以下の欄に揚げるもの |
0.2mg/l 以下 |
0.01mg/l 以下 |
水域類型ごとに指定する水域 |
III | 水道3級(特殊なもの)及びIV以下の欄に揚げるもの | 0.4mg/l 以下 |
0.03mg/l 以下 |
水域類型ごとに指定する水域 |
IV | 水産2種及びVの欄に揚げるもの | 0.6mg/l 以下 |
0.05mg/l 以下 |
水域類型ごとに指定する水域 |
V | 水産3種工業用水農業用水環境保全 | 1mg/l 以下 |
0.1mg/l 以下 |
水域類型ごとに指定する水域 |
備 考
- 基準値は、年間平均値とする。
- 農業用水については、全りんの項目の基準値は適用しない。
(注)
1.自然環境保全:自然深勝等の環境保全
2.水道1級:ろ過等による簡易な浄水操作を行うもの
水道2級:沈殿ろ過等による通常の浄水操作を行うもの
水道3級:前処理等に伴う高度の浄水操作を行うもの
(「特殊なもの」とは、臭気物質の除去が可能な特殊な浄水操作を行うものをいう。)
3.水産1種:サケ科魚類及びアユ等の水産生物用並びに水産2種及び水産3種の水産生物用
水産2種:ワカサギ等の水産生物用及び水産3種の水産生物用
水産3種:コイ、フナ等の水産生物用
4.環境保全:国民の日常生活(沿岸の遊歩等を含む。)において不快感を生じない限度