不法係留船とその一般的な対策
不法係留船とは?
河川は、国土保全や公共の安全のために適切に管理していく必要があります。そのため、河川内に係留杭を打設するなどしたり、船舶を恒常的に係留する場合には、河川法24条・26条に基づく河川占用の許可を河川管理者から受ける必要があります。
しかし、河川内における船舶の恒常的な係留については、洪水の流下阻害や河川管理施設への損傷等の治水上の支障のほか、一般住民の自由使用の妨げ、騒音の発生、景観の阻害等様々な河川管理上の支障を引き起こす可能性があるため、通常は許可されていません(遠賀川水系では原則として河川占用を許可していません)。
そのような中で、河川管理者の許可を得ずに河川内に係留されている船舶は、河川法違反となり、不法な係留船として『不法係留船』と呼んでいます。
河川法 第24条(抜粋) ・河川区域内の土地を占用しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより河川管理者の許可を受けなければならない。 河川法 第26条(抜粋) ・河川区域内の土地において工作物を新築し、改築し、又は除却しようとする者は、国土交通省令で定めるところにより河川管理者の許可を受けなければならない。 |
不法係留船がもたらす一般的な問題
治水上の問題
◇ 船舶の流出
- ・不法係留船は、係留施設が簡素であることが多く、出水や高潮時に流出し、護岸を痛めるなどの二次災害を発生させる懸念があります。
- ・流出した船舶が橋桁などに引っかかると、流下能力を下げる阻害物となり、水害を引き起こす要因となります。
◇ 流下能力の低下・洗掘の恐れ
- ・河川幅が狭い川では、係留船舶の係留により流下能力を阻害する恐れがあります。特に、とも綱が短い場合は水位上昇に対応できず、その場で船舶が沈み、阻害物となる可能性があります。また、係留船やとも綱にゴミなどの流出物が付着して、それ自身が阻害物なることもあります。
- ・不法係留船やその係留施設が原因となって河岸や河床の洗掘が起こる可能性があり、治水上の安全が脅かされます。
◇ 河川改修等の妨げ
- ・船舶が係留されていることにより河川改修等の実施が妨げられ、迅速な治水対策の弊害になることがあります。

- 河川の流下能力を阻害する船舶

- 護岸に乗り上げる船舶
河川利用上の問題
◇ 水際線の私物化
- ・不法係留船が水際線を不法に占用しているために他者によるレクリエーション利用ができないなど、水面・水際部の河川利用が制限されてしまいます。

- 河川内に電源ボックスを設置

- 河川内に桟橋や倉庫を設置
環境上の問題
◇ 自然環境への悪影響
- ・河岸部に船が乗り上げるなどにより、河岸部の自然環境を破壊する可能性があります。特に、貴重な動植物が生息する環境下でも不法係留している場合があり、自然環境に悪影響を与えています。
- ・不法係留船から捨てられる油などにより、水質の悪化が懸念されます。
◇ 生活環境の悪影響(迷惑駐車、ゴミの不法投棄)
- ・船舶を利用する人が車を河川周辺の道路や空き地に無断駐車するため、緊急車両の通行妨害を引き起こしたり、地域住民の生活環境に悪影響を与えています。また、船の所有者が道路や水辺にゴミを捨てる場合もあり、自然環境や生活環境に悪影響を与えています。
- ・不法係留船の係留は沿川の生活環境に配慮していないため、早朝の出港時にはエンジン音が周辺住民の安眠を妨害するなどの問題を起こしています。
◇ 景観の阻害要因
- ・美しさへの配慮を欠く雑然とした係留施設(桟橋、係船杭等)や不法係留船により、河川景観が阻害される場合があります。

- 沈船による油の流出

- プレジャーボート利用者による駐車
不法係留船への一般的な対策
平成10年に建設省河川局長(現在の国土交通省水管理・国土保全局長)から『計画的な不法係留船対策の促進について』の通達が示され、河川や地域の実態に応じた対策が進められるようになってきています。
<<規制>>
河川管理・河川環境上の支障を勘案して重点的に強制的な不法係留船の撤去措置を図っていく区域(重点的撤去区域)を設定し、年次的に拡大していきます。
<<保管>>
治水上支障がなく、河川環境への問題も少ない場所において係留施設を設置しています。あるいは他水域にある保管施設や陸域保管施設へ誘導しています。
<<強制的な撤去の実施>>
行政指導(警告チラシ等)を実施後、所定の手続きを実施し、強制的に不法係留船を撤去します。
所有者情報 (住所・氏名) |
措置 | 措置の基づく法律 |
---|---|---|
不明 | 簡易代執行 | 河川法 |
判明 | 行政代執行 | 行政代執行法 |

不法係留船に対する罰則
河川の土地(水面も含む)に河川管理者の許可なく船舶を係留することは河川法第24条(占用)に違反する行為です。
また、河川区域内に河川管理者の許可なく桟橋や係船杭を設置することは河川法第26条第1項(工作物の新設等)に違反する行為です。その他、刑法や廃棄物処理法により処罰される可能性があります。
該当する法律及び条文 | 内容 | 罰則規定の条文 | 罰則規定の内容 |
---|---|---|---|
河川法 第26条第1項 |
河川区域内での工作物の新築等 | 河川法 第102条 |
1年以下の懲役または 50万円以下の罰金 |
河川法 第29条第1項 河川法施行令 第16条の4 |
河川の流水等について 河川管理上支障を及ぼす おそれのある行為の禁止 |
河川法 第109条 |
6ヶ月以下の懲役、 30万円以下の罰金、 拘留又は科料 |
廃棄物の処理及び 清掃に関する法律 第16条 |
みだりに廃棄物を捨ててはならない | 廃棄物の処理 及び 清掃に関する 法律第25条 |
5年以下の懲役もしくは 1千万円以下の罰金 |
刑法261条 | 他人の物を損壊しまたは障害した者 | 刑法261条 | 3年以下の懲役または 30万円以下の罰金もしくは 科料 |