遠賀川のあゆみ
洪水と改修の変遷【洪水】
遠賀川における、明治以前の資料に残る一番古い洪水は、元和6年(1620年)「遠賀川洪水(水巻町)」とあります。さらに、元和6 年から明治22 年(1889 年)にまでの270 年の間に、約70回
の洪水の記録があります。
明治以降においても度々洪水が発生し、特に明治22年7月、明治38年7月、昭和10年6月、昭和16年6月と大洪水が頻発しました。そして、昭和28年6月には、流域内の死傷者231名(死者20名)、
浸水家屋数38,791 戸に達するという、大水害が発生しました。
近年においても、平成15年7月、飯塚・穂波地区を襲った大雨により、同地区は大きな被害に見舞われました。
また、平成21年7月と平成22年7月には、平成15年7月の出水と同規模の出水が2ヶ年連続して発生し、さらに平成24年7月洪水では、基準地点日の出橋において既往最高水位を記録しました。
平成に発生した主な洪水
発生年月日 | 原因 | 日の出橋水位 (m) |
被害状況 |
---|---|---|---|
平成24年7月14日 (2012) |
梅雨 | 8.17 | 家屋全壊1戸、家屋半壊1戸、床上浸水121戸、 床下浸水857戸 |
平成22年7月14日 (2010) |
梅雨 | 8.08 | 床上浸水104戸、床下浸水358戸 |
平成21年7月24日 (2009) |
梅雨 | 8.05 | 床上浸水706戸、床下浸水1,565戸 |
平成15年7月19日 (2003) |
梅雨 | 8.07 | 負傷者2名、家屋全壊7戸、家屋半壊9戸、 床上浸水2,902戸、床下浸水1,664戸 (飯塚市街部) |
平成15年7月11日 (2003) |
梅雨 | 8.07 | 床上浸水86戸、床下浸水32戸 (直方市) |
平成13年6月19日~20日 (2001) |
梅雨 | 7.84 | 床上浸水87戸、床下浸水151戸 |
平成11年6月29日 (1999) |
梅雨 | 6.72 | 床上浸水232戸、床下浸水930戸、田畑冠水752ha |
平成24年出水


平成22年出水


平成21年出水


平成15年出水


平成13年出水


昭和に発生した主な洪水
発生年月日 | 原因 | 日の出橋水位 (m) |
被害状況 |
---|---|---|---|
昭和60年6月25日~26日 (1985) |
梅雨 | 7.20 | 死者1名、負傷者1名、家屋全壊3戸、 家屋半壊39戸、床上浸水83戸、床下浸水578戸、 田畑冠水1,143ha |
昭和55年8月28日~30日 (1980) |
前線 | 7.35 | 死者4名、負傷者2名、家屋全壊15戸、 家屋半壊4戸、床上浸水331戸、床下浸水1,916戸、 田畑冠水662ha |
昭和55年7月7日~12日 (1980) |
台風26号 | 6.23 | 死者1名、家屋半壊7戸、家屋流失1戸、 床上浸水21戸、床下浸水949戸、田畑冠水790ha |
昭和54年6月10日~13日 (1979) |
梅雨 | 7.40 | 死者1名、負傷者8名、家屋全壊7戸、 家屋半壊94戸、床上浸水1901戸、床下浸水4,262戸、 田畑冠水4,138ha |
昭和47年7月13日~14日 (1972) |
梅雨 | 6.45 | 死者1名、負傷者7名、家屋全壊7戸、 家屋半壊27戸、家屋流失1,614戸、家屋浸水4,212戸 |
昭和28年6月25日~30日 (1953) |
梅雨 | 欠測 | 死者20名、負傷者211名、家屋流出・全半壊953戸、 浸水家屋38,791戸、田畑流出埋没1,261町歩、 田畑冠水13,116町歩 |
昭和16年6月25日~29日 (1941) |
梅雨 | 5.65 | 堤防、道路、橋梁、家屋、耕地、炭鉱等の被害が続出 |
昭和10年6月23日~24日 (1935) |
梅雨 | 5.60 | 床上浸水455戸、床下浸水947戸、堤防決潰1ヶ所、 橋梁流出6橋 |
昭和の出水


明治時代に発生した主な洪水
発生年月日 | 原因 | 日の出橋水位 (m) |
被害状況 |
---|---|---|---|
明治38年7月25日~26日 (1905) |
梅雨 | 6.51 | 死者12名、家屋流出倒壊163戸、浸水家屋21,000戸以上、 堤防決潰257箇所、橋梁流出141橋 |
明治37年6月24日~25日 (1904) |
梅雨 | - | 死者1名、家屋倒壊2戸、家屋埋没1戸、 床上浸水550戸、床下浸水650戸、田畑冠水47町歩 |
明治33年7月6日~11日 (1900) |
梅雨 | - | 死者1名、家屋倒壊8戸、浸水家屋780戸、 堤防決壊55箇所、橋梁決壊26ヶ所(田川郡被害のみ) |
明治22年7月4日~5日 (1889) |
梅雨 | - | 死者11名、家屋流出倒壊127戸、浸水家屋2,069戸、 堤防決壊2,286箇所、橋梁破壊412橋 |
洪水と改修の変遷【改修】
遠賀川水系における治水事業は、直轄事業として明治39年に第一期改修工事に着手し、稲築町(現在の嘉麻市)から河口までの区間及び彦山川、中元寺川、穂波川、犬鳴川などの区間について築堤、掘削、護岸等を施工し、大正8年に竣工しました。第一期改修工事竣工後は、福岡県により維持管理を実施していましたが、昭和20年に再び直轄事業として着手、昭和23年には、第二期改修 工事として着手、さらに戦後最大流量である昭和28 年6月の洪水及び近年における流域の開発状況等を考慮し、昭和49年に基準地点である日の出橋におけるピーク流量と計画高水流量を4,800m3/sとする計画を策定しました。
その後は、北九州市の都市用水の確保等を目的とした遠賀川河口堰を建設。平成9年改正の河川法に基づき、従来の計画を踏襲する遠賀川水系河川整備基本方針を策定し、平成19年4月に遠賀川水系河川整備計画を策定しました。
西暦 | 年号 | 計画の変遷等 | 主な事業内容 |
---|---|---|---|
2009 | 平成21年 | ・遠賀川特定構造物改築事業(中間堰) (平成21年度着手~) |
|
2007 | 平成19年4月 | ・河川整備計画策定 | |
2005 | 平成17年 | ・排水機場の新設(約4m3/s)等 | ・直轄床上浸水対策特別緊急事業 (直方地区) (平成17年度着手~平成21年度完成) |
2005 | 平成17年 | ・排水機場の増強、調整池整備 | ・直轄床上浸水対策特別緊急事業 (学頭・菰田地区) (平成17年度着手~平成21年度完成) |
2004 | 平成16年7月 | ・遠賀川水系河川整備基本方針の策定 (昭和63年の工事実施基本計画を踏襲) |
・遠賀川飯塚・穂波地区床上浸水対策 特別緊急事業 (平成16年度着手~平成21年度完成) |
2003 | 平成15年7月 | ・7.19 遠賀川集中豪雨災害 | ・明星寺川床上浸水対策特別緊急事業 (平成14年度着手~平成17年度完成) |
2001 | 平成13年6月 | ・梅雨前線による大洪水 | ・遠賀川中流地区災害復旧等関連緊急事業 (平成13年度着手~平成17年度完成) |
1988 | 昭和63年3月 | ・遠賀川水系工事実施基本計画 第2回改定 (計画横断形、堤防高についての 部分改定) |
・犬鳴ダム完成(昭和63年3月) ・糒堰改築(平成元年5月) ・一本木堰改築(平成3年3月) ・建花寺川浄化施設完成(平成4年3月) ・庄司川排水機場完成(平成6年3月) |
1980 | 昭和55年8月 | ・前線による大洪水 | ・遠賀川河口堰完成(昭和55年3月) ・学頭、曲手、前川排水機場完成 (昭和55年) ・山鹿排水機場完成(昭和56年3月) ・岡森堰改築、高柳堰改築(昭和58年6月) ・川端排水機場完成(昭和59年1月) ・笹尾川排水機場完成(昭和60年6月) ・殿浦排水機場完成(昭和62年12月) |
1979 | 昭和54年4月 | ・八木山川直轄区間延伸 | |
1979 | 昭和54年4月 | ・犬鳴川直轄区間延伸 | |
1977 | 昭和52年4月 | ・彦山川直轄区間延伸 | |
1975 | 昭和50年4月 | ・西川直轄河川編入 | ・曲川排水機場完成(昭和50年6月) ・藤野川排水機場完成(昭和51年6月) ・鯰田排水機場完成(昭和51年12月) |
1974 | 昭和49年4月 | ・遠賀川水系工事実施基本計画 第1回改定 (計画規模1/150、日の出橋計画流量 4800m3/s) |
・陣屋ダム完成(昭和50年3月) ・花の木堰改築(昭和50年3月) |
1968 | 昭和43年4月 | ・彦山川直轄区間延伸 | |
1966 | 昭和41年6月 | ・遠賀川水系工事実施基本計画策定 (昭和37年の改訂総体計画を踏襲) |
・直轄河川鉱害復旧事業(昭和42年度着手) ・菰田排水機場完成(昭和47年2月) |
1966 | 昭和41年3月 | ・遠賀川水系一級河川に指定) | ・力丸ダム完成(昭和40年7月) |
1962 | 昭和37年7月 | ・改訂総体計画の策定 (昭和38年度以降総体計画) (計画規模1/70、日の出橋計画流量 3700m3/s) |
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1958 | 昭和33年 | ・修正総体計画策定 | ・碇川放水路完成(昭和31年) |
1953 | 昭和28年11月 | ・昭和28年度以降総体計画の決定 | |
1953 | 昭和28年6月 | ・西日本大水害(植木堤防破堤) | |
1949 | 昭和24年 | ・遠賀川改修総体計画(修補計画)策定 | ・植木堤防腹付(昭和23~25年度) ・笹尾川築堤(昭和27年3月竣工) ・臨時石炭鉱害復法制定 |
1945 | 昭和20年10月 | ・第二期改修工事着手 | |
1941 | 昭和16年6月 | ・大水害発生 | ・戦時体制中のため、水害対策は見送り |
1919 | 大正8年3月 | ・第一期改修工事の竣工 (福岡県に維持と管理を移管) |
・石炭採掘による鉱害の激化 (昭和15年には筑豊炭鉱史上最大の出炭量 を記録) |
1906 | 明治39年4月 | ・遠賀川第一期改修工事に着手 ・中島橋周辺計画流量約4200m3/s ・改修延長69.2km ・工事予定期間 10年 |
・全川にわたる築堤・掘削 ・蛇行部是正 (飯塚町・頴田村上原・田川郡細村) ・支川の付替 (泉河内川(現穂波川)、中元寺川) |
1905 | 明治38年12月 | ・河川法適用河川に認定 (内務省告示) |
・狭窄部の川幅拡大 (底井野村大字下大隈、芦屋町大字山鹿河口) |
1905 | 明治38年7月 | ・遠賀川大洪水 | |
1896 | 明治29年8月 | ・河川法制定 | |
1889 | 明治22年7月 | ・遠賀川大洪水 | ・嘉麻・穂波西郡の災害復旧工事 (各町村負担) |