今後の手続きについて

川辺川ダム事業における環境調査等について、準備書・評価書を作成するなど環境影響評価法の手続きをとるべきではないですか。

川辺川ダム事業においては、今後とも、各分野の専門家の指導を受けながら必要な調査を行い、その結果を公表してまいるとともに、地域の方々等にも十分に説明を行い意見を聞きながら具体的な環境保全対策を実施していくこととしています。
 なお、川辺川ダム事業については、特定多目的ダム法第4条第1項に規定する基本計画の最新の変更の告示が平成10年6月9日に行われており、環境影響評価法附則第3条第1項及び環境影響評価法施行令附則第3条第1号の規定により、同法第2章から第7章までの規定は適用しないこととされています。

第3章 調査項目の選定等    

ダムや貯水池ができることより、通風障害や強風発生など、気象についてはどうなりますか。

建設省九州地方建設局で管理しているダムにおいて、ご質問のようなことが問題となったという報告はないとのことです。

湛水予定区域内に鉱山跡がありますが、水没に伴う汚染は考えられませんか。

湛水予定区域内にある五木銅山跡、新五木銅山跡について、水質調査を行った結果、水道水質基準に示される値をいずれも満足していますが、水没に対し必要に応じて対策を講じ、安全性を確保することとしています。

ダムにより周辺の地下水事情が大きく変化しませんか。

貯水池周辺の地下水位は全般的に高いことから、貯水池周辺の地下水に与える影響は小さいと考えられます。

調査対象範囲は、河口までとするべきではないですか。

調査地域は、川辺川ダム事業の実施により、環境影響を受ける恐れのある地域及びその周辺の区域としています。

第4章 調査結果及び保全への取り組み

4.2 水環境

濁度の予測について、0度から5度未満と一括していますが、さらに細かく分けた結果はどうなりますか。

アユについては水産用水基準(1995年版);資料編;付表4.2-1(P資4.2-1)において、SSで5mg/L(球磨川流域では概ね濁度5度に相当)となる濁りが長期化すれば漁獲量に影響が出るとの報告があり、濁りによる影響を判断する上での目安の一つであるととらえることができます。そこで、濁度の予測結果は0度から5度未満で一括して示しました。
 川辺川の洪水時等の濁りの大きい期間を除いた平常時の濁度は概ね2度程度であり、濁度の予測結果を0度から2度未満で示すと、ダムがない場合の日数216日に対して210日と概ね現況の水質を維持できるという結果が得られています。

ダム建設後、工事中とも水質は保全されるとあるが、環境基準を下回るものに対しても漁業補償は行われるのですか。

漁業補償については、川辺川ダム事業による漁業への影響の観点から、適切に行うこととしています。

水位維持施設の堆砂対策など具体的設計、操作法はどうなりますか。

水位維持施設の具体的な構造等については現在検討中です。堆砂による支障が生じないよう必要な措置を講じるとともに、適切な維持管理を行っていくこととしています。

4.4 植物・動物・生態系

1)植 物

生息地が消失する重要種について具体的な保全対策はどのようになりますか。

重要な種への影響と保全の内容は、「川辺川ダム事業における環境保全への取り組み」の4.4.2.1植物(重要な種及び群落):2)重要な種への保全措置:表4.4.2.1-2(P4.4-120~121)に示すとおりです。

重要な種に対する保全措置としては生育地改変による影響の回避または低減を基本とし、必要に応じて、専門家による指導・助言をもとに移植や標本の採集による記録保存などを行います。なお、植生の移植は移植先の生態系のバランスなどを攪乱する恐れがあるため慎重に行います。

また、今後とも調査を継続するとともに、工事に先立つ環境巡視による確認調査も継続して行います。

事業区域内外、或いは事業区域外のみで確認された重要種の影響予測で、「事業区域外では現状の生育環境が保全される」とありますが、事業区域外についても生育環境を保全していくということでしょうか。

事業者において講じる保全の内容については、「川辺川ダム事業における環境保全への取り組み」の4.4.2.1植物(重要な種及び群落):2)重要な種への保全措置:表4.4.2.1-2(P4.4-120~121)に示すとおりです。

2)動 物

カワネズミやヤマネ、アナグマなどの種は「生息環境の一部は減少するが、事業区域外に生息環境と考えられる場所がある」とされていますが、事業区域外の生息環境における当該種の許容量についてはどうなっていますか。

「川辺川ダム事業における環境保全への取り組み」の4.4.2.2動物(重要な種):2)重要な種への保全措置:表4.4.2.2-6(P4.4-129~130)に示す保全の内容をもって保全を図っていきます。

事業の実施による影響について検討が必要とされた重要種に対する保全策として、「4.4.2.3 陸域の生息・生育環境」の保全策をもって保全が図られるとあるが、これらの保全対策の効果についてはどのようになりますか。

重要な種への影響と保全の内容は、「川辺川ダム事業における環境保全への取り組み」の4.4.2.2動物(重要な種):2)重要な種への保全措置:表4.4.2.2-6(P4.4-129~130)に示す対策をすることとしています。これらの保全対策の効果については、毎年環境巡視員の中間報告会において報告しており、今後とも調査を継続することとしています。

クマタカ
クマタカの調査結果については、「熊本県クマタカ調査グループ」の調査結果とにズレがあるように思われますが、お互いのデータを照らし合わせてズレの原因を検証する必要はありませんか。

クマタカの調査については、今後とも継続して実施するとともに、球磨川流域の自然環境に関する調査を行っている地域の住民及び団体への説明を十分行っていくこととしています。

クマタカの調査グループとは8月7日に意見交換を行ったところであり、今後も必要に応じ、調査グループと意見交換を行っていくこととしています。

クマタカへの影響を回避する目的で、現在予定されている原石山以外の候補地については考えられませんか。

原石山については、従来からクマタカへの影響をできるだけ少なくするために規模縮小等について検討を実施してきています。今後、クマタカへの影響をなお一層低減するため、現在予定している原石山の改変面積を極力縮小するよう、当該原石山での骨材の採取を補うための、貯水池内での新たな骨材の採取について調査検討していくこととしています。

『クマタカ・その保護管理の考え方(平成12年4月)』に準じた調査方法をとるまでは、どのような調査の手法がとられていましたか。

調査方法については、4.4.1.2動物:2)鳥類:(1)調査方法:②個別調査:aクマタカの生息調査:a)現地調査(P4.4-33~34)に示すとおりです。

クマタカについては、具体的な保全策はどうなっていますか。

保全措置ついては、4.4.2.2動物(重要な種):重要な種への保全措置:(2)クマタカに対する保全措置:②保全措置(P4.4-131~133)に記載しているとおりです。

ニホンザル
ニホンザルについて、藤田グループの頭数が昭和63年、平成元年度の調査より、平成10年度の調査時には40頭も減っていますが、ダム事業による影響ではないですか。

一般的に、ニホンザルの生息状況の変化については、複数の要因が考えられ、ダム事業による影響だけを把握することは困難です。

今後とも、専門家の指導を受けながら、県や村にも協力をいただき、調査を実施していきます。

ニホンザルの調査年ごとの結果や行動域を示したものはありますか。

ニホンザルの生息調査結果については、平成5年度及び平成9年度に実施した聞き取り調査や文献調査などを踏まえ、平成10年度に実施した現地調査などをもとにとりまとめたものです。

3)生態系

「生態系の多様性」など「多様性」という言葉が何度も使われていますが、多様性の評価基準はどうなっていますか。

動植物の生息・生育環境の保全への取り組みは、生態系の多様性の確保、野生動物の種の保存、生物の多様性の確保、自然環境の体系的保全の観点から、事業による動植物及びその生息・生育環境への影響を種や場のみならず、上位性、典型性、特殊性及び移動性の視点から生態系の構造に着目して検討を行ったものです。

中・大型の哺乳類については、「川辺川の左右岸の移動が困難になると考えられる」とありますが、移動が困難になった結果、行動圏の変化はどうなりますか。

湛水による中・大型哺乳類の移動の阻害の影響を低減するために、湛水予定区域周辺の移動経路や渡河地点を確保することとしています。

今後、環境変化による魚種及び個体生息密度に関する調査を行いますか。

今後、試験湛水までに魚類相の調査を実施するとともに、試験湛水以降はモニタリング調査を実施し、環境変化に伴う魚類相の変化を継続的に追跡していきます。

河川域の生息環境について、ダム建設による分断以外の影響の予測検討をしましたか。

4.4.2.4河川域の生息・生育環境:1)生息・生育環境への影響:(3)その他の変化(P4.4-152)のとおりです。

ダム建設後に土砂供給が変化することが示されていますが、その点についてどのように考えていますか。

4.4.2.4河川域の生息・生育環境:1)生息・生育環境への影響:(3)その他の変化(P4.4-152)のとおりです。 

動植物の影響は、分布種のリスト作成に主眼が置かれ、生息環境や生態系全体の視点が不足していませんか。

動植物の生息・生育環境の保全への取り組みについては、川辺川ダム事業による動植物及びその生息・生育環境への影響を種や場のみならず、上位性、典型性、特殊性及び移動性の視点から生態系の構造に着目して検討を行っています。

九折瀬洞
九折瀬洞について、「一時的な生息場の水没や、洞窟内の往来の阻害に伴う洞窟性のコウモリの生態に対する影響については、現在の知見では予測が困難である」とされているのに、提示されている保全措置で保全ができるのでしょうか。

ダムの湛水による影響を極力低減するために、「九折瀬洞保全対策検討会」を設置し、専門家の指導を受けながら保全措置を検討しています。検討会においては、コウモリ類の移動を確保するための新たな経路の設置、流木などの異物が洞窟内に入らないようにするための洞口周囲への網場の設置などを検討しており、実施した保全措置についてはモニタリングを実施することとしています。

九折瀬洞の東ホールにおける保全措置である新たな経路及び網場について、具体的な位置や規模等を教えて下さい。また、新たな経路を設けることによって、洞内の気象に与える影響予測について教えて下さい。

コウモリ類の移動を確保するための新たな経路については、専門家の意見を聴きながら、その出入口の位置や経路のとり方及び断面形状等について、洞内の微気象等に配慮して決定していくとともに、施工にあたっては、騒音や振動による影響が極力小さくなるような工法で実施していくこととしています。

また、網場についても、専門家の意見を聴きながら、具体的な位置等について決定していくこととしています。

洞口が一日以上水没するのは2年に1回程度と予想されていますが、水没日数の算定根拠を教えてください。また、何日以上水没したら影響が出ると考えているのですか。

川辺川ダムの設置に伴い九折瀬洞の洞口が水没する頻度及び期間については、昭和32年から平成8年までの40年間の川辺川の流量をもとに、川辺川ダム貯水池の運用計画を踏まえ、試算した結果です。

なお、洞口が水没することによる九折瀬洞の生息環境への影響については、4.4.2.5九折瀬洞の生息環境:1)生息環境への影響(P4.4-153~154)に記載しています。

東ホールを中心にした根拠は何ですか。東ホール以外の部分に生息する生き物へ与える影響はありませんか。また、東ホール以外の保全措置は必要ないのでしょうか。

東ホールでは、ユビナガコウモリなどのコウモリ類やツヅラセメクラチビゴミムシなどの昆虫類、イツキメナシナミハグモなどのクモ類などが生息し、九折瀬洞に特有な食物連鎖関係が顕著であると考えられます。したがって、東ホールの洞窟性動物及び生息環境への影響を中心に検討を行っています。

東ホールについては、ホールの一部は水没することがあるものの、確認されているほとんどの洞窟性動物の主要な生息場は水没しません。

東ホール以外の箇所は、標高のほとんどがEL.280m以下であることから、水位によっては水没することがありますが、東ホールの保全措置により、九折瀬洞におけるダム湛水の影響の低減が図られると考えています。

「ツヅラセメクラチビゴミムシ」や「イツキメナシナミハグモ」は東ホール以外でも確認されているのですか。またその場所はどこですか。

九折瀬洞窟内で、昆虫類等の生息調査を行った結果、「川辺川ダム事業における環境保全への取り組み」の4.4.1.3動植物の生息・生育環境の特徴:3)九折瀬洞:表4.4.1.3-7(P4.4-112)に示す昆虫類4種、クモ類5種、カニムシ類1種、ヤスデ類2種の計12種が確認されています。なお、東ホールでは12種すべてが確認され、それ以外の箇所においては、ヤスデ類2種、クモ類2種が確認されています。

なお、重要な種の具体的な生息場所については、種の保護の観点から公表を差し控えています。

水面の上昇下降により、洞内の土砂で閉塞する可能性はありませんか。

九折瀬洞内の水位変動により東ホール内の土砂が大きく移動する可能性は少ないと考えています。

九折瀬洞の地質的要素について、特筆すべき事項はありませんか。

4.3.1地形及び地質の調査結果:3)調査結果:(2)地質(P4.3-6)の文献①~④により重要な地質を選定したところ、九折瀬洞は該当しません。

九折瀬洞以外の九折瀬洞窟群については、重要な洞窟性の動物はいませんか。

「五木村学術調査(自然編)」の668ページに記載されている洞窟群のうち、湛水予定区域内にある洞窟について現地調査を行った結果、重要な洞窟性の動物は確認されていません。

4.6 人と自然との触れ合いの活動の場

現在の渓流がもつレクリエーション資源の喪失の影響が考査されておらず、カヌーイスト、釣り人、水遊びに訪れる人など定量的統計データが勘案されていないのではないですか。

人と自然との触れ合いの活動の場の分布及び利用状況、利用環境の状況を調査した上で、これらの場に対する影響予測を行っています。訪れる人などの「アクセス性の変化」についても予測を行っています。

その他の質問

湛水による影響で周辺地盤の安定性に変化が起きませんか。

川辺川ダムでは、貯水池周辺の地形・地質踏査やボーリング調査等を詳細に実施し、専門家を含めた委員会を設置し、湛水による地すべりの可能性や必要な防止対策について指導・提言を受け、対策工事も実施しています。

さらに、ダム運用を開始する前には試験湛水を行い、対策工の効果の確認や斜面を監視するなどの対応をとることとしています。

ダム工事や湛水により遺跡や埋蔵文化財についてはどうなりますか。

埋蔵文化財については、熊本県、五木村、相良村にご協力いただき、調査等を実施しています。

堆砂対策など、ダム供用期間中の維持管理についてはどうなりますか。

川辺川ダムにおいては、ダム上流域での流出土砂量を推定し、その100年分を見込んだ容量2,700万m3を計画上確保しています。

また、ダム完成後は、貯水池の堆砂状況を測量により確認し、対策が必要と判断された場合は、浚渫などの対策を適宜講じるなど、適切に維持管理を行うこととしています。

流域に建設される砂防ダムによる影響はどうなりますか。

砂防事業においては、渓流環境に配慮した事業を実施しています。

ダムが老朽化した場合どうなりますか。

ダムは完成後は、適切に維持管理を行うこととしています。

本資料に関する調査や検討は誰が行ったのですか。そのうち、クマタカの現地の観察は誰が行ったのですか。

本資料をとりまとめるにあたり、環境調査、影響予測、保全対策の検討は、(財)ダム水源地環境整備センターに委託して実施したものです。そのうち、クマタカの現地の観察については、(財)ダム水源地環境整備センターの管理、指導の下、新日本気象海洋(株)が行っています。