【1】開催日時

平成8年4月27日(土)  13:00~15:30

【2】開催場所

チサンホテル熊本(2階、あその間)
熊本市辛島町4-39  TEL 096-322-3911

【3】出席委員(敬称略)  

  • 熊本大学法学部教授(委員長)江藤  孝
  • 熊本大学理学部教授     岩崎 泰頴
  • 九州共立大学学長      長  智男
  • 九州東海大学農学部教授   戸田 義宏
  • 熊本県立大学総合管理学部長 米沢 和彦
  • 熊本県知事         福島 譲二[公務のため欠席]
  • (代理出席)熊本県副知事  魚住 汎輝
  • 熊本県議会議員       高田昭二郎
  • 人吉市長          福永 浩介
  • 相良村長          高岡 隆盛
  • 五木村長          西村 久徳
  • 熊本県議会議員       高田昭二郎
  • 相良村議会議長       恒松  新
  • 五木村議会議長        照山 哲榮

【4】報道関係  10社23名

(テレビ)

NHK、KAB、KKT、RKK、TKU:計5社

(新 聞)

熊本日日新聞、毎日新聞、朝日新聞、西日本新聞、共同通信:計5社

【5】配布資料

1.議事次第
2.第4回川辺川ダム事業審議委員会議事要旨(案)
3.第4回川辺川ダム事業審議委員会参考人資料(追加資料を含む)
[下津氏、福岡氏]
4.第5回川辺川ダム事業審議委員会参考人プロフィール
5.第5回川辺川ダム事業審議委員会参考人執筆論文資料
6.球磨川の治水計画・川辺川ダム計画について(追加資料)
7.川辺川ダム建設にかかる環境について
8.川辺川ダム建設にかかるかんがい用水について
9.ダム事業審議委員会への申し入れ、ビデオテープ

【6】議事次第

1.委員長挨拶
2.議事
 [1]第4回ダム事業審議委員会議事要旨の確認
 [2]第4回ダム事業審議委員会での参考人の意見について追加説明
 [3]ダムの「地質・構造」についての現地調査報告
 [4]参考人からの意見聴取
 [5]審議
 [6]今後の方針等

【7】審議内容

1.第4回ダム事業審議委員会議事要旨(案)について

・原案のまま全会一致で了承。(傍聴記者に配布)

2.第4回ダム事業審議委員会での参考人の意見について追加資料により説明

 [1]過去の主要洪水のピーク流量の数値が過去の資料と最近の資料と違っているとの指摘について
 [2]昭和40年以降の降雨データも加えた計画降雨量の再検討の必要性について
 [3]計画策定時における立神単位図法による計算式の妥当性について
 [4]降雨パターンや地域分布の型を評価した上で基本高水流量を設定し直すことについて
 [5]現在の河道の流下能力の評価について
 [6]総合治水の観点からみた、水田地帯の遊水地やトンネル河川による分水・家屋の嵩上げ等の方法による洪水処理の妥当性について
 [7]休耕田の利用や高床式による治水対策の妥当性について

3.ダムの「地質・地質構造」についての現地調査報告

  • ダムサイト周辺は、四万十帯に属し、砂岩、頁岩の互層で概ね垂直に立っているか少し北に傾斜している。
  • この周辺には、地震を起こすと言われている活断層はない。仏像構造線、瀬戸石構造線等の断層は、およそ6,000万年より前であり、現在は活動していない断層である。
  • 高野は、かなり急斜面のところを造成していて、崖錐堆積物が大量にあるところであり、崖錐堆積物の間に6,000年前のアカホヤという火山灰を含むロームが一枚挟まれている。
  • 見る人によっては火山灰のところを境にして多少滑落があるかなというかもしれない。もともと集落は、この崖錐の末端部にあった。
  • 高野の斜面は非常に急に見えるが、実際は一番急なところで二十数度ぐらいで崖錐としては安定しているかもしれない。
  • 頭地の方は、ロームの間に崖錐堆積物が入っており、ロームの一番上は6,000年前のアカホヤという火山灰が表層直下にあり、その後の崖錐はなさそうである。
  • Asoー4と呼ばれる溶結凝灰岩の下底部が滑るのではないかと言われているが、Asoー4の下底部の傾斜は緩く、かつ下底部は直接基盤と接しているのではなくて、古い段丘層があるのでそれ程神経質にならなくても良いと思えるのである。
  • ダムサイトの位置は、頭地より下流で一番狭いところである。両岸ともかなり厚い砂岩でできており、多分数十mの厚さがある。
  • 高さが100mを超える大規模のダムで上椎葉ダム、川内川の鶴田ダムも同じ地体構造区分で類似した地質条件であるがトラブルを起こしていない。さらに言えば、鶴田にしても、上椎葉にしても、左岸と右岸では別の岩盤にあたっているが、川辺川ダムは、全く同じ砂岩層で、条件としては前二者のサイトよりもふさわしいというのがわかる。
  • 川辺川ダムについて、誰も「絶対大丈夫」とは言えないだろうが、例に挙げたものも含め、周辺の他のダムと比較して、地質的条件については問題はないと考えられる。

4.参考人からの意見聴取について

○熊本工業大学工学部教授 中島重旗 氏からの意見聴取

  • 川辺川にダムができるとどう変化するかを研究するため、現在ダムがある球磨川とダムのない川辺川について調査した。調査した地点は、市房ダム下流の多良木と川辺川の永江大橋のあたりを基準点として調査した。
  • 流量は、時々は測っていたが、建設省が出版している流量表で検討した。ダムができると流量が平均化され、晴天時にサイレンが鳴らないのに水位が上がる。
  • 多良木は、ダムによる流量調整で沿水域が狭く、高水域が広くなっている。川辺は、流量変動が大きいので、沿水域が大きい。
  • 多良木の沿水域にはヨシ、ヨモギ、或いは竹なども生えており、古くからあったような形で残っている。川辺川は、沿水域には真ん中に砂が残っている。
  • 多良木の高水域はヨシがいっぱい生えており、相当大きな高水がこないと動かなく、高水域が原野になっていこうとしている。川辺川は、高水域でもさらっとした砂が残っており、今度高水がきたらさっと流れてしまう。
  • 多良木は、早瀬が少なく平瀬が多く淵が浅くなっている。淵に礫が落ち込んで流れなくなり、魚種が変わってくることになる。川辺は、早瀬もあり、淵も深くなっている。
  • 多良木は、ダムにより上流からの砂の供給がないため、大きな石だけが残される。川辺では、砂の供給があり沿水域でも材料の変動が大きいため、小さな砂もあり粒径が均等になっている。
  • ダムができると貯水池上流端で河床が上がるから、ダムをつくったら護岸堤防をまた高くしておかないとこの辺りで洪水が起こる。貯水池上流端の砂礫が溜まったらその砂礫を取り除かないといけない。
  • 水質は、BODは大きく変わらないが、SSに大きな違いがある。SSが夜中に上がっているのはダムの放流があるためだろう。ダムのSSは、もっと高いが下流に行くにつれて石に付着するため、下がってくる。
  • 川辺の方のSSは、非常に低く大体10㎎/l以下である。因みに、人吉の例であるが、人吉は両方の水が混ざるため、その平均になっている。
  • 川辺の水をメンブランフィルターに通すと、濁度がないから淡い色をしている。人吉の水は色が少し淡くなっている。多良木は濁っている。
  • ダムに入る水は、秋の洪水とか春の梅雨の頃の濁った水が大量にはいってくると、貯水池内全体が濁ってしまい1年中濁ったままになる。しかも2μとか3μという非常に小さい粒子は1m沈殿するのに1年はかかる。
  • 多良木は、SSが高いので、無機物の泥が多く生物も珪藻、ゾウリムシなどの原生動物が多い。川辺は、アオミドロなどの緑藻、珪藻、藍藻が多い。太陽光線が底までつくほど、だいたい30㎝ぐらいの早瀬がある川辺川に緑藻がおおい。
  • 水生昆虫については、多良木は水生動物が少なく川辺は多い。種類的には、多良木は、カゲロウ、ヒラタドロムシが多く、川辺はカワゲラ、トビケラが多い。人吉は、川辺と多良木を足したようなもので市房ダムの影響をあまり受けていない。
  • 魚類については、多良木はオイカワ、ウグイ、フナ、ナマズが多くカワムツがほとんどいない。川辺はアユ、カワムツ、ドンコが多い。合流点下流の人吉では、アユ、ナマズ、カワムツ、オイカワ、ウグイがおり、多良木と川辺の両方の種類がいる。ウグイはあまり水質に関係しないが、カワムツとオイカワは完全に変わってくる。ダムがあるところはオイカワが多く、アユやカワムツが少ない。川辺の方はオイカワもいたがカワムツが多い。
  • 欧米の河川の考え方は、川全体を起こるか起こらないかわからない80年に1回の確率洪水を越水することなく流下させるような計画はない。例えば、これまで越水した場所では、1/80や1/200の確率で護岸堤防を嵩上げして、それ以外は低い確率で対応するなど川全体でなく箇所別にやっている。やはり、確率という考え方はそうではないかと思っている。

5.質疑等

  • ダム上流とダム下流の比較は、詳しくやっていないが古屋敷発電所を造る前に調査したがそれ程変動はなかった。
  • ダムができた影響について、魚たちが上れなくなった場合に、支流に向けて自分の生息範囲を広げるかどうかの調査はしていないが、球磨川の魚が川辺川に入った可能性はある。
  • 多良木では、川が汚れているがダムだけの影響とは言えない。しかし、ダム直下でSSが高いのをみるとダムの影響はある。
  • この研究は、ダムのできる前とダムができた後の比較はしていない。
  • 濁水対策として清水バイパスを利用する場合、どの位置で取水するか、いつどういうときに流すのか、どのくらいの流量を流すのか非常に重要になってくるので、整理しておく必要がある。

6.川辺川土地改良事業について

  • 変更計画により、需要量に大きな変更はないと聞いており、ダム計画のかんがい容量に著しい影響はないと予想されるが、今回、変更計画が確定したので、今後建設省は、正式な協議を受けることになる。
  • 本審議委員会としては、「著しい影響はないと予想される」ということで進めたい。

7.今後の方針等

  • 申入書については、要望書とビデオがきているが、前回同様委員の参考資料としての取り扱いとする。(全会一致で了承)
  • 次回委員会の日程についての調整は後ほど行う。(全会一致で了承)

8.ダム事業審議委員会への申し入れについて

(第4回委員会以降、当日までに事務局に届いた申入書)
 1)「川辺川ダム事業審議に関する要望書」
    (申入者)・清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会
         ・ダム問題を考える市民の会
         ・球磨川から全てのダムを無くす会
         ・子孫に残そう清流球磨川じいちゃん・ばあちゃんの会 

     

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