川辺川ダム事業は、昭和40年7月3日の球磨川水害後の地域の要請を踏まえ、昭和42年度に実施計画調査に着手され、昭和51年3月に特定多目的ダム法に基づき、洪水調節、河川環境の保全・舟運などのための流量の確保、かんがい及び発電を目的とした、ダムの建設に関する基本計画が策定(告示)されました。

現在、一般国道445号、主要地方道宮原五木線や村道の付替道路工事などが実施され、代替国道は約8割の進捗状況となっています。また、全体8箇所の代替地のうち、7箇所が完成し、残りの頭地代替地についても今年の秋から移転が始まります。

川辺川ダムの水源地域とその下流地域は、豊かな自然を有していることから自然環境に十分配慮したダムづくりが必要です。このため、昭和51年度より川辺川ダムの湛水予定区域とその周辺区域などにおける動植物の生息・生育環境、水環境等の調査、保全対策の検討を継続的に行っています。平成5年には動植物や水質の専門家からなる「川辺川ダム環境保全・創造に関する検討委員会」を設置し、委員会の指導を受けながら、生態系への配慮など最新の知見に基づき検討を進めています。特にクマタカ、九折瀬洞については、平成11年1月に「川辺川ダム周辺猛禽類検討会」、平成12年1月には「九折瀬洞保全対策検討会」を設置し、専門家の指導を受けながら詳細な調査、保全対策の検討を行っています。これらの成果を計画・設計に反映させるとともに、環境保全対策を実施するにあたっては、ダムの工事現場に全国ではじめての「環境巡視員」を平成5年度より配置し、工事予定箇所の事前調査や施工者等へきめ細かい指導等積極的に環境保全対策を行いながら事業を進めてきています。

これらの取り組みについては、既に平成7年時点で取りまとめた、「川辺川ダム事業における動植物の良好な環境の保全と創造」、「川辺川ダム事業における良好な水環境の保全と創造」として公表するとともに、事業説明会、インターネット、折込みチラシの配布等を通じて地元住民の方々に広く情報提供し、ご意見を伺いながら進めてきています。

本資料は、前述した「川辺川ダム事業における動植物の良好な環境の保全と創造」、「川辺川ダム事業における良好な水環境の保全と創造」の公表後の調査により得られた新たな知見に加え、従来個別に行ってきた環境保全の取り組み等を平成11年6月に施行された環境影響評価法に基づき示された環境影響評価の標準項目を踏まえて現時点でとりまとめたものです。

川辺川ダムは、球磨川沿川の人々の生活を洪水による被害から守り、また、地域の発展に欠くことのできない水資源を確保するなど、当地の社会・経済を支える上で、多大な効果があります。今後とも、各分野の専門家の指導を受けながら、調査及びモニタリングを行い、その結果を公表してまいるとともに、自然環境に十分配慮したダムづくりを推進してまいりますので、皆様方の一層のご理解、ご支援をお願いいたします。

なお、本資料の「植物・動物・生態系」をとりまとめるにあたっては、以下の専門家の方々に助言を頂きました。

川辺川ダム環境保全・創造に関する検討委員会

川辺川ダム環境保全・創造に関する検討委員会

荒井秋晴 九州歯科大学講師
今江正知 祟城大学工学部教授
入江照雄 熊本生物研究所代表
大田眞也 日本鳥学会々員
大塚 勲 熊本昆虫同好会々長
楠田哲也 九州大学工学部教授
◎塚原 博 九州大学名誉教授
(五十音順・敬称略,◎:委員長)

川辺川ダム周辺猛禽類検討会

大田眞也 日本鳥学会々員
中島義人 日本鳥類保護連盟専門委員
(五十音順・敬称略)

九折瀬洞保全対策検討会

荒井秋晴 九州歯科大学講師
入江照雄 熊本生物研究所代表
江崎哲郎 九州大学工学部教授
◎杉尾 哲 宮崎大学工学部教授
西川喜朗 追手門学院大学人間学部教授
村田正文 熊本大学名誉教授
(五十音順・敬称略,◎:委員長)

この他、ニホンザルについては、藤井尚教氏に助言をいただきました。

平成12年6月     
建設省九州地方建設局
川辺川工事事務所