【1】開催日時

平成8年6月2日(日)  13:00~14:50

【2】開催場所

チサンホテル熊本(2階、あその間)
熊本市辛島町4-39  TEL 096-322-3911

【3】出席委員(敬称略)

  • 熊本大学法学部教授(委員長)江藤  孝
  • 熊本大学理学部教授     岩崎 泰頴
  • 九州共立大学学長      長  智男
  • 九州東海大学農学部教授   戸田 義宏
  • 熊本県立大学総合管理学部長 米沢 和彦
  • 熊本県知事         福島 譲二
  • 熊本県議会議員       高田昭二郎
  • 人吉市長          福永 浩介
  • 相良村長          高岡 隆盛
  • 五木村長          西村 久徳
  • 相良村議会議長       恒松  新
  • 五木村議会議長        照山 哲榮

【4】報道関係  11社24名

(テレビ)
  • NHK、KAB、KKT、RKK、TKU:計5社
(新 聞)
  • 熊本日日新聞、毎日新聞、読売新聞、朝日新聞、西日本新聞、共同通信:計6社

【5】配布資料

1.議事次第
2.第5回川辺川ダム事業審議委員会議事要旨(案)
3.第6回川辺川ダム事業審議委員会参考人プロフィール
4.球磨川・川辺川の魚族に関する検討委員会報告書
5.川辺川ダム事業における動植物に良好な環境の保全と創造
6.川辺川ダム事業における良好な水環境の保全と創造
7.川辺川ダム建設にかかる環境について
8.ダム事業審議委員会への申し入れ

【6】議事次第

1.委員長挨拶
2.議事
 [1]第5回ダム事業審議委員会議事要旨の確認
 [2]審議委員会資料の公開について
 [3]自然環境の保全について
 [4]参考人からの意見聴取
 [5]審議
 [6]今後の方針等

【7】審議内容

1.第5回ダム事業審議委員会議事要旨(案)について

  • 第5回ダム事業審議委員会議事要旨(案)を下記のとおり修正したうえで、第5回ダム事業審議委員会議事要旨として公開することを全会一致で了承。(傍聴記者に配布)
  • 熊本県立大学総合管理学部長  →   熊本県立大学総合管理学部教授
  • この研究は、川辺川ができた後の基礎資料として調査したものであり、ダムのできる前とダムができた後の比較はしていない。


この研究は、ダムのできる前とダムができた後の比較はしていない。

2.審議委員会資料の公開について

  • これまで、審議委員会資料の公開は建設省川辺川工事事務所のみで行われてきたが、今後は、建設省八代工事事務所、熊本県の関係機関、流域市町村についても公開できるように調整することについて全会一致で了承(事務局を通じて公開できるように手続きを行う)。

3.自然環境の保全について

○戸田義宏委員(九州東海大学農学部教授)からの説明

  • 治山・治水は森林を造ることから始まる。
  • 樹雨(発生した霧が水滴となって落ちる)が発生するなど、森林があることによって降雨量が増える。
  • スポンジの上に水を流すと、水は乾いた状態では表面を流れるが、ある程度水を含むとスポンジに浸透するようになる。森林は、土の容積の6割から7割が隙間状態のスポンジ状態であり、裸地では水は表面を滑るが、立木がある森林では落葉層が溜まり水を含んだ状態となるため、かなりの水を貯水できる。また、冬場になれば貯えた水を流してくれる。いわゆる水源涵養の能力である。
  • 森林は土砂の流出をくい止め、浸食を防いでいる。資料によると、森の土砂の流出量を1としたとき、全伐だと10倍、根まで取ってしまうと78倍までなってしまうというデータもある。根が土を縛り付けて土砂の流出を防ぐことになり、森林の表層型の山崩れ防止効果が発揮される。
  • 川辺川流域は、約62%が人工林でありそのうち約62%が樹齢で26歳以上になり、10~20年経つと伐期がくる。そのことを念頭に入れておかなければならない。
  • アメリカで森林を伐採して養分量の比較をした資料によると、伐採5ヶ月後から窒素、硝酸などの養分減少が顕著となり、3年間で1ヘクタール当たり342kgの窒素がなくなった。3年間分を取り戻すのに43年間かかるという。伐採はできるだけして欲しくない。
  • 建設省では綿密な現地調査も実施しており、『川辺川ダム事業における動植物に良好な環境の保全と創造』によると、植物982種、動物1,772種、計2,754種が確認され、また環境巡視員制度の創設など環境の保全と創造についても熱心にやっている。
  • しかし、動植物の代替地は困難である。ダムができた場合、動物が逃げていく場としての支流が問題となり、川辺川支流の動植物の詳細な調査が重要となってくる。また、ダム建設後の動植物調査も今後の対策として重要である。
  • 全国的に、堆砂によりダムの容量が失われている。堆砂問題を解決するためにも、清水バイパスは有効と思われる。森林の新鮮な栄養を海まで送る役割を川は持っており、その意味においても清水バイパスは有効と思われる。
  • 短い急峻な川であり、予測不能の洪水や干ばつに対してダムが必要であれば、まず緑のダムを考えるべきであり、五木村民の生活を十分に考えた上での保護林対策が必要である。
  • 森林の貯水、供給による流水の平準化、土砂の流出防止、水質浄化の機能を最高に発揮させるためにも、ダム堤体のあり方(工法)を十分に検討するとともに、森林の保護帯を設置し、適切な森林を整備する必要がある。私たちは、自然と共生できる環境を考えて行くべきである。

4.参考人からの意見聴取について

○九州大学名誉教授 塚原博氏 からの意見聴取

  • 球磨川・川辺川の特徴は、急流であり、かなり下流まで河川勾配がきつい。また、清流であり、下流までA類型(アユの住める川)に指定されている川である。
  • 流量の変動の大きい暴れ川であり、過去において洪水が多い川である。
  • 球磨川水系の魚類については、45種と魚の種類が豊富である。球磨川と川辺川は、河川形態(河川勾配、水質)が違うため魚類の種類が違っている。川辺川はウグイ、球磨川はオイカワ、ハヤが多く、優占種となっている。
  • 球磨川水系の漁獲量は、アユが多く、下流の八代市近くまで鮎が獲れている。
  • 川辺川は、球磨川より付着藻類、底生動物が多い。
  • 『川辺川ダム事業における動植物に良好な環境の保全と創造』の冊子は、私が委員長となった研究会で指導したもので、調査は広範囲にわたって詳細に実態が調査されており、非常に良く取りまとめられていると思う。
  • 鳥類だけで84種、ほ乳類20種、両生類12種、陸生昆虫1,484種、甲殻類8種と数多く調査されている。注目すべきものとしてニホンザル、タヌキ、ゲンジボタル、オオムラサキ等が上げられる。
  • この冊子には、「自然環境と共生したダムづくりを進めることを基本理念とする」という理念に基づき保全と創造についても詳しく記載している。
  • 環境保全対策として、植栽用のヤブツバキを仮植えしたり、ケモノミチを設置したり、ヤマセミの営巣地を保全したりしている。また、魚ののぼりやすい川づくりとして、瀬戸石ダム、荒瀬ダムに魚道を造る計画が進められている。
  • 川辺川ダムが多目的ダムであり利水に目がいくが、川辺川は暴れ川であり水量を調整する機能が大切である。自然が自然を破壊することの怖さを、十分知る必要がある。開発事業による自然破壊、または改変が一部は当然起こるが、自然が大きく自然を破壊することを防止し、開発と自然環境の保全について、いかに調和を保ち調整するかの総合計画が極めて大切である。自然環境を守る立場でダム計画に期待している。
  • 流量変動の大きい球磨川水系では、雨量の多いときに貯め込んで、渇水期の時に下流に水を補給するという流量調整機能が、魚とかいろいろな水生生物の生活環境の面で極めて大切である。
  • ダム事業については、環境を守り、人命、財産を守り、豊かな環境を創造することが大切である。そのために、森林等植物の涵養を考え、上流から下流までみた対応をすることが必要と思われる。

(補足説明)

  • ダムの富栄養化については、ダムサイトが標高の高い位置にあり水温が低いこと、水質がAA類型と非常に良いこと、及び汚濁負荷源が少ないことから可能性は低いと思われる。万全を期すため、選択取水設備等いろいろな対策を考えるべきである。

5.質疑等

  • 今までのダムでは、ダムのできる前とダムができた後を比較したデータはない。
    今後は、ダムができる前とできた後の調査が大切である。
  • 球磨川と川辺川は河川特性が違うので、市房ダムができた後、球磨川の魚が清流を求めて川辺川に移動したということは考えにくいが、ダムができた場合、川辺川をのぼってきた魚が川辺川の支川に移動することは考えられる。支川を大切にしていく必要があり、十分考えないといけない。

6.今後の方針等

  • ダムサイトの現地調査、公聴会、参考人からの意見聴取、建設省からの説明等全般を通じて、質問など建設省から説明を聞きたい点について整理を行う。次回までに事務局に取りまとめてもらう。(全会一致で了承)
  • 市民団体からの申入書については、これまでと同様委員の参考資料とする。なお、市民団体等からの申し入れについては、次回委員会において、委員長が論点を整理して意見を伺う。(全会一致で了承)
  • 次回委員会の日程についての調整は後ほど行う。(全会一致で了承)

7.ダム事業審議委員会への申し入れについて

(第5回委員会以降、当日までに事務局に届いた申入書)
 1)「川辺川ダム事業審議に関する要望書」
    (申入者)・清流球磨川・川辺川を未来に手渡す流域郡市民の会
         ・ダム問題を考える市民の会
         ・球磨川から全てのダムを無くす会
         ・子孫に残そう清流球磨川じいちゃん・ばあちゃんの会

     

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