干潟の再生は、球磨川特有の干潟性底生動物をはじめ、多様な生きものが生息する干潟やヨシ原など、良好な環境の保全・創出を目標としました。その目標の達成に向け、前川河口中北地区(干潟再生地)において土砂投入による干潟、ヨシ原の再生を図りました。
再生にあたっては、球磨川の遙拝堰から河口部に至る下流域を対象として、専門的知見やアイデア等を幅広く聴取することを目的として平成25年に設立された「球磨川下流域デザイン検討会」において検討を行いました。
また、その下部組織として、水生生物に配慮した施工方法、モニタリング調査方法、調査結果の評価並びに更なる改善方法及び今後の維持管理等について検討を行う「水生生物ワーキンググループ」を設立し、平成26年(2014年)から、国交省とともに物理的・生物的な観点からモニタリング及び評価を行い、その結果を反映することを繰り返しながら、試験施工、本施工を実施しました。
本施工では、くしの歯のように工事用道路を設置し、その間に土砂を投入しました。堤防側から沖側にかけて緩勾配をつけて投入することで、波浪や潮汐など自然の営力が不均一に影響し多様な底質(泥や砂、礫等)からなる干潟がうまれました。

整備前は泥干潟で、ヨシ原がごく一部にみられます。

泥干潟のため、櫛の歯のように工事用道路を設置して、その間に土砂を投入しました。


土砂投入に伴ってヨシ原が拡大し、砂泥~礫干潟に変化してきました。

堤防から沖に向かって緩勾配になるように、土砂を投入しました。

投入した土砂が、波浪や潮汐など自然の営力によって粒の大きさや重さごとに運ばれ、泥・砂・小石が入り混じる多様な環境が生まれました。
平成31年(2019年) 3月の一次施工完了から2年後の令和3年(2021年)9月時点では、施工範囲より外側は泥優先のまま、一方、施工範囲内では波浪の影響を強く受ける沖側は、シルト(砂と粘土の中間の土粒子)分が流されて礫優先に、中間部では沖側の泥が波浪や潮汐によって堆積し砂泥優占に、波浪の影響を最も受けにくい堤防側は投入した土砂(砂礫)のままになっています。


![]() 砂泥 |
![]() 礫・転石 |
エコトーンとは、陸域と水域、森林と草原など、異なる環境が連続的に推移して接している場所のことで、河岸や湖沼の沿岸などで生物の生息環境が連続的に変化するため、多様な生物の生息場所として重要なエリアです。
土砂投入により緩勾配に造成した干潟は、ヨシの移植も試験的に行いながら、経年変化に伴い徐々にヨシ原や塩生植物が増加しエコトーンが形成されました。
また、形成されたエコトーンを保全するために、継続した土砂の投入が必要となることから、造成に使用する土砂に球磨川の河川整備によって生じた掘削土を有効活用するなど、土砂供給の仕組みの構築も併せて検討を行いました。

イラスト素材提供:次世代のためにがんばろう会
掘削土砂の投入による汽水域・河口域の干潟の再生効果を評価するため、塩生植物の変遷や、底生動物・魚類・鳥類の生息状況の経年変化などについてモニタリング調査を行いました。
その結果、塩生植物では生育範囲が著しく拡大し、重要種の定着が確認されています。
底生動物や魚類では、総種数や重要種種数が経年的に増加傾向です。
また、干潟環境維持指標種やヨシ原再生指標種も確認されています。
鳥類では23種(重要種5種)、周辺地区を含めると50種(重要種8種)が確認されています。
良好な干潟環境の維持及びヨシ原の再生が成功し、干潟再生地にエコトーンが形成されていると考えられます。
塩生植物
ヨシ及び塩生植物の生育範囲が著しく拡大している。
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底生植物
総種数、重要種種数ともに経年的に増加傾向にある。 また、砂礫や泥など多様な環境の創出やヨシ原の拡大等により、それぞれの環境に適する底生動物が確認されている。
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魚類
確認種数、重要種種数ともに経年的に増加傾向にある。 また、干潟環境維持指標種や、ヨシ原再生指標種も確認されている。
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鳥類
令和4年度の調査では本施工ヤードで確認された種数は若干少なかったが、確認週数、重要種ともに経年的に概ね増加傾向にある。 また、干潟性鳥類やヨシ原依存種も確認されている。
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