流域及び河川の概要

松浦川は、その源を佐賀県武雄市山内町青螺山(標高599m)に発し、鳥海川等の支川を合わせながら北流し、唐津市相知町で厳木川を合わせ、下流平野部に出て徳須恵川を合わせ、その後は唐津市中心市街部を貫流し、玄界灘に注ぐ、幹川流路延長47km、流域面積446km2の一級河川である。

その流域は、佐賀県北西部に位置し、唐津市をはじめ、伊万里市、武雄市の3市からなり、流域の土地利用は、山地等が約84%、水田や畑地等の農地が約15%、宅地等の市街地が約1%となっている。

流域内には流域内人口の約5割が集中する唐津市があり、沿川には、JR筑肥線、唐津線、国道202号、203号等の基幹交通施設に加え、西九州自動車道が整備中であり交通の要衝となるなど、この地域における社会・経済・文化の基盤を成すとともに、松浦川の豊かな自然環境に恵まれていることから、本水系の治水・利水・環境についての意義は極めて大きい。

松浦川流域は、脊振山地や丘陵地に囲まれ、河口部が虹の松原を有する玄海国定公園に指定されているほか、黒髪山県立自然公園等がある。松浦川は標高が約400~500mの山地を源流としており、河床勾配は約1/500~1/10,000と比較的緩勾配である。一方、厳木川は、作礼山(標高887m)、八幡岳(標高764m)と比較的高い山地を抱えており、河床勾配は約1/50~1/500と急勾配になっている。

流域の地質は、本川上流部の大部分が古第三紀層に属しており、本川下流部の山地及び厳木川流域は主として花崗岩よりなり、本川下流の平野部は沖積層からなる。流域は日本海型気候に属し、特に玄界灘の対馬海流により湿潤な空気がもたらされるため、平均年間降水量は約2,100mmと多く、降水量の大部分は梅雨期と台風期に集中している。

本川の源流付近には、カネコシダ自生地、また川古の大楠など天然記念物が存在する。山間を流れる区間ではヤマセミやカワセミなどが見られる。

源流から徳須恵川合流点付近までの中上流部は、人工林を主体とした低い丘陵地となっており、狭い田園地帯を流下する。河道は掘り込みとなっており、河床には岩が露出し、メダケやオオタチヤナギなどが河岸に繁茂している。水域には、イダ(ウグイ)、オイカワなどが生息する。特にイダは、春一番が吹く頃に遡上することから「イダ嵐」として地域の風物詩になっている。また、唐津市佐里地区のアザメの瀬では、コイ・フナ・ドジョウなどや湿地性植物の生息・生育の場となるよう氾濫原における湿地の再生が取り組まれている。厳木川合流点付近は、良好なアユの産卵場となっているほか、砂礫河原にはチドリ類が見られる。その他、松浦川、厳木川の上流部はホタルの生息地として地域から親しまれている。

徳須恵川合流点付近から松浦大堰までの下流部は、唐津平野を流下する。大部分が松浦大堰の湛水区間となっており、メダケ、オギ群落などが河岸に繁茂し、徳須恵川合流点付近では、ヨシ、マコモなどからなる湿地が形成され、サギやメダカなどが生息している。

松浦大堰下流河口部の汽水域には、マハゼやシラウオなどが生息する。また、河岸にはハママツナやシオクグなどの塩生植物群落が点在し、干潟にはハクセンシオマネキなどが生息している。

厳木川は、河床に岩が露出し、水域にはアリアケギバチやオヤニラミ、ゲンジボタルなどが生息している。

徳須恵川は、上流の山間渓谷部ではヤマセミなどが生息し、下流の平野部の水域には、アユ、オイカワなどが生息している。

松浦川における治水事業の歴史は古く、慶長13年(1607年)、唐津藩主寺沢志摩守広高が、唐津城の要害を固めるために松浦川の改修に着手し、現在の川筋にしたといわれている。この松浦川の改修は、城の防御だけでなく、舟運を開き、洪水を防御し水田を開発した。この水田を潮風から守るために防風林を植林しており、これが二里の松原(虹の松原)と呼ばれ、現在、国の特別名勝として唐津市の代表的な観光資源となっている。

松浦川の本格的な治水事業は、昭和23年7月洪水、同年9月洪水を契機に、昭和24年から中小河川改修事業として、松浦橋地点における計画高水流量を2,100m3/sとし、唐津市山本から河口までの区間及び徳須恵川の唐津市石志から合流点までの区間について、築堤、護岸等の整備を実施した。

その後、昭和28年6月洪水による未曾有の災害を受け、昭和36年より直轄事業として松浦橋地点における計画高水流量を2,700m3/sとした改修計画に改訂し、築堤、護岸整備、橋梁架け替えを実施するとともに、河道掘削及びそれに伴う塩水遡上による塩害防止を目的とする松浦大堰を建設した。

その後、昭和42年7月、昭和47年7月等の洪水の発生及び流域の開発等を踏まえ、昭和50年に基準地点松浦橋における基本高水のピーク流量を3,800m3/sとし、このうち洪水調節施設により400m3/sを洪水調節して、計画高水流量を3,400m3/sとする工事実施基本計画を策定した。この計画に基づき、駒鳴捷水路工事等に着手し流下能力の向上を図り、昭和62年には厳木ダムが完成した。

その後、平成2年7月洪水により甚大な被害を受けたため、中上流部において、築堤、護岸整備、橋梁架け替え等を実施し、流下能力の向上を図った。現在は、松浦川、徳須恵川及び厳木川の上流部において、築堤及び河道掘削等の事業を進めている。

砂防事業については、昭和18年から支川宇木川において佐賀県が砂防堰堤等を整備している。

河川水の利用については、農業用水として約8,700haの農地でかんがいに利用され、水道用水としては唐津市、多久市等で、工業用水としては唐津市内で利用されている。また、水力発電として厳木発電所等3箇所の発電所による総最大出力約610,000kWの電力供給が行われている。

水質については、河口から上流まで全川にわたりA類型に指定され、いずれの地点も環境基準をほぼ満足しており、良好な水質を維持している。河川の利用については、下流部の堤防や高水敷は、散策やスポーツ、花火大会などのイベント会場として活用され、水面はボートやカヌーの練習等に利用されている。特に、河口部の水面と唐津城とが相まった良好な河川景観は市民に親しまれている。

中上流部では、河川空間を利用した自然体験や環境学習など様々な活動が行われている。

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