アザメ新聞 Vol.01 (H13.12.27)

アザメ新聞は相知町佐里下地区で行われる自然再生事業の進展をお伝えする新聞です。
この事業は住民参加の事業でどなたでも検討会に参加できます。これまで3回の検討会と1回のシンポジウムが行われました。最初の2回はシンポジウムに先立ち行われた準備会的な色彩の強い検討会でした。3回目からいよいよ始まったという感じです。
アザメ新聞では、現在までのアザメの瀬自然再生事業の取り組みと今後のアザメの瀬検討会の状況を連載していこうと思ってます。国土交通省武雄工事事務所の若手職員が編集担当者となって参加者の一員として報告していきたいと思います。

第1回検討会 H13.11.6「自然再生事業って何?」

自然再生事業って何?ということで、住民の方にたくさん集まっていただきました。武雄工事事務所から自然再生事業とは何か?について説明しました。
(その場の雰囲気により、若輩の今村技官が説明しました。途中、島谷事務所長、大野出張所長に助けられ、何とか説明しました。)
内容は一つ目に松浦川アザメの瀬は全国で15箇所のうちの1つであり、当地区のように何もない状態からのスタートは他に類が無く、そういう所から自然を再 生することは大変意義深い事業であるということ。二つ目にこれまでのような行政側からの一方的な事業展開ではなく、住民参加により住民と一体となって一か ら作り上げていくという事業である。などを説明しました。会場からは自然再生事業に対する真剣な質問が飛び交いました。

 

第2回検討会 H13.11.19「再生事業勉強会」

第2回検討会では、自然再生に関する専門家3名を招いて勉強会を行いました。3名の方の講演の後、参加者との意見交換を行いました。

萱場 祐一氏(自然共生研究センター長)

題目「米国における自然再生事業」

萱場さんにはアメリカでの自然再生事業がどのように行われているのかを話していただきました。直線化してしまった河道の蛇行化や氾濫原の復元の話でした。 氾濫源の復元といっても規模が大きいため、牧草地などを手当たり次第購入していくものです。土地の購入は、日本と違い企業やNPO、ボランティア団体等も 行うそうです。資金の調達方法から実際の購入等に至るまでの講習会が各地で行われているそうです。

西廣 淳氏(東京大学保全生態学研究室助手)

題目「氾濫原の保全生態学」

西廣さんには、植物にとって川という環境がどのようなものなのか、また洪水に適応した植物もいることを話していただきました。興味深かったのは、シードバ ンク(埋土種子集団)の話で、要は土の中にある生きている種のことです。地上に見られる種子の数の数十倍から数百倍の種が地下に眠っているわけです。これ を利用すれば絶滅が危惧されている植物の種も地下からさがすことが出来るそうです。とても夢のある話だと思いませんか。多くの方が関心を持ち質問が沢山で ました。

吉冨 友恭氏(自然共生研究センター特別研究員)

題目「氾濫原の保全生態学」

吉冨さんには、水域の展示施設の代表的な施設として水族館の最近の展示の傾向、また自然共生研究センターで実践している河川の研究解説パネルの開発、総合 的な学習の時間づくりについて話してもらいました。情報を伝えるということの重要性をアメリカの事例等によりわかりやすく説明していただきました。また、 研究解説パネルの説明では五感に訴えることを重視し取り組まれたそうです。総合学習ではインターネットを使い、児童達の興味関心に沿って学習を展開した り、動画を作成し研究機関と小学校の連携を考えながら進めたそうです。

河川環境再生シンポジウム H13.12.9「生態系を蘇らせるために」


地域の住民の方々に自然再生事業がどういうものなのか、何故必要なのかを理解してもらうために、小泉首相に自然再生事業の必要性を「わ環の国づくり」会議の中で提唱された鷲谷教授を招いてシンポジウムを開催しました。
シンポジウムではまず鷲谷教授による「生態系を蘇らせるために」と題して基調講演が行われました。講演では生態系の機能が損なわれることによって、自然の 恵みが提供されなくなったことが地球レベルでとても深刻な問題となっており、私たちが健康を保ち健全な生産活動を行うためには自然の生態系を再生すること がとても重要であると言われました。例えば、世界中で起こりつつある「実り無き秋」の問題です。これは、本来であれば植物が育ち花が咲き実が実るのが普通 ですが、世界各地で花は咲いても実が実らない現象が起こっているそうです。その原因はというと普通にその辺にいた昆虫がいなくなったためだそうです。とて も偉い先生と聞いていましたが、とても親しみやすい方でした。

 

パネルディスカッションの進行役をしていただいた、国土交通省河川局の池内調整官が「河川の護岸工事等が生物のにぎわいを無くした」というような事業の 背景を説明し、泊課長はアザメの瀬に水路を造り河畔林を植え、堤防から川の水を入れて湿地化を進める素案(イメージ)を提示しました。

 

その後のパネル討議では、大草町長による相知町の自然と文化の役割、萱場センター長によるアメリカの自然再生事業、田島先生による松浦川の魚類相、地元佐里 地区の古賀才治さんによる相知町の自然環境・風土についてのお話がありました。最後にアザメの瀬は、水田,里山,川などが一体となった人の暮らしの中での再生事業ということで、日本で最初の試みであるという話になりました。是非成功させて全国に発信し、この相知町が名実ともに自然再生事業のメッカとなるよう参加者に訴え、シンポジウムを盛大な拍手の中で閉会しました。

第3回検討会 H13.12.19

第3回検討会では、シンポジウムの感想と今後の進め方を話し合いました。勉強会・シンポジウムを終えて地域の方の関心と環境に対する意識が高いことを強 く感じました。例えば、昔の川には景勝地(呼称)がありその場所を守っていくという意識が高かったが、現在はそのような場所がないため親しめないとか、アザメの瀬地区の耕作者の方からは、環境のことばかりでなく水害の恐ろしさも認識して欲しいなどアザメの瀬地区の自然の特徴と歴史を踏まえた自然再生に対す る希望や期待など具体的な意見が多数でました。また、歴史や植物のなどいくつかのテーマの分科会を作ってはどうかという意見がでました。事務局では、次回 検討会にいくつかの分科会の案を提示したいと考えています。
年明けには現地見学会等を開催し、アザメの瀬自然再生事業が住民の方々と活発に議論していけるような場になるよう努力していこうと思っています。

編集後記

湯淺編集長より一言

自然再生事業に向けた勉強会も3回実施し、2002年はいよいよプラン作りが始まります。多くの方々のアイデアで日本一の再生プランを作りたいと思いま す。なれない編集者たちの下手な文章をお許し下さい。これまで参加されていない方も、遠慮なくご参加下さい。

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